滅ぼす銀、統べる金







──そこには男と女がいた。

女は露出度の高い装束を身に着け、大木に背を預けて目を閉じていた。
より正確に言うならば、彼女は気絶していた。

男はその女の所持していたバッグの中から現れた、血に濡れた武器をしげしげと眺めていた。

女にとって幸いだったのは、今彼女の荷物を漁っているこの男に、ゲームに乗る気が全く無かった事だろう。
逆に女の不幸は、最初に出会ったこの男が血も涙も無く、かつあまりに手強かった事だろう。
彼女の炎を使った技──不知火流忍術と言う──は、一撃も放つ事を許されず、逆に男の不可視の一撃で大木に叩きつけられて気を失った。

「こんなモノでも無いよりはマシか…」
そう呟きながら彼女──不知火舞を一撃で昏倒させた男は、彼女に支給された“バールのようなもの”を手にすると、ごく自然な動作で背後に振り向いた。

「ほう……いつから我に気付いていた?」
「…この女を眠らせる前からだ」
「ふむ」

舞を倒した銀髪の男の背後に現れた新たな、対照的な金髪の男は特に表情を変える事無く、感心し、ごく小さく心中で頷いた。

「銀髪の男よ、一つ訊こう。貴様はこのゲームに乗る者か?」
「クックック……愚問だな。私はこんな児戯に付き合うつもりなど無い」
金髪の男の端的な問いに、銀髪の男はそうせせら笑って答えた。
「ふむ。だが銀髪の男よ。ここは我等の居た世界とは異なる世界のようだ。
あの小娘にはいずれ裁きを与えるにしても、先ずはその為に障害を排除せねばならない。違うか?」
「詭弁だな…だが正論だ。星の浄化を果たす為にも、こんな児戯に時間を割く訳にはいかない」
「ふむ。貴様の目的はそれか。ある意味神となるべき私のそれと近しいものがあるな」
「大層な目的だな…お前の様な者にそれが為せるのか? 金髪の男よ…」
「その問い、そのまま貴様に返そうか?」
ゆらり、と金髪の男の纏ったマントが翻り、その端々から光が生まれ出す。
「クックック…いいだろう。大口を叩けるだけの力があるか見てやろう」
それに対し、銀髪の男も“バールのようなもの”を真一文字に高く構える。

暫し、硬直状態。

「ムン!」
先に動いたのは金髪の男だった。
マントの先端の一角が意志を持ったかのように銀髪の男に向かって伸び、その眼前で光を放つ。
「フッ」
だが、銀髪の男はその光が前髪に触れるよりも早く、構えた“バールのようなもの”を縦方向に上昇一閃し、マントごとその向きを空へと逸らした。
「………!」
そして次の瞬間にはもう金髪の男の眼前まで踏み込み、袈裟掛けに“バールのようなもの”を振り下ろしていた。
「ムンッ!」
だが金髪の男もまた、その一撃に刹那の反応を見せ、光を帯びた左掌で受け止める。
ダメージを受けた様には皆目見られない。

「…なるほど。口ばかり達者な訳ではなさそうだ」
「貴様もな。見てくれの割に合わぬ力と覚悟を持っているな。叶うなら我を殺すつもりだったのだろう?」
「当然だ」
そんな短いやり取りの後、二人はそのままの体勢でどちらからともなくクックッと小さく笑いだした。
「以外とお前とは気が合うのかもな」
「同感だ、銀髪の男よ。…そう言えばまだ名を問うてなかったな」
「……セフィロス。それが私の名だ」
「ふむ。…我が名はイグニス。ひとまずは「よろしく」と言っておこう」


「…さて、イグニスよ。私は気が進まないのだが、あの娘、どうするつもりだ?」
暫くした後、セフィロスは未だ気を失っている舞にくいと親指を向けてイグニスに問いかけた。
「その辺の処理は私が請け負おう。それにあの女、知らぬ者でもないしな」
「なら、一応見張りは私がしておこう」
イグニスの答えに満足したのか、セフィロスは手近な大木の枝の上に飛び乗り、周囲に意識を配り始めた。
それを確認しイグニスも舞に歩み寄ると、マントを操り舞の両手足を拘束し、自由な手で忍装束を乱暴に剥ぎ取る。
すぐに舞は一糸纏わぬ姿となり、その中心──晒け出された秘所に、イグニスは前戯も無しに己の逸物を突き入れた。
「!!あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
事の衝撃と激痛に、流石に舞の意識も覚醒するが、自分の状況を判断するや、ボロボロと大粒の涙を零し始める。
「嘆く事は無い不知火舞。神の御子を宿せるのだ。光栄に思うがいい」
「いやぁ……アンディ……アンディーーーーーーっ!!」

(やれやれ…耳障りの良いものではないな…)
そう樹上で思うセフィロスの五感は、舞にとっては悲しいかな、近くに誰の存在も感じ取っていなかった。
そして結局、舞が蝙蝠に包まれて消えるまでの十五分の間、誰一人としてこの場に近付く者はいなかった。
果たしてそれは他の参加者にとって幸か不幸か──。

 名前 セフィロス【FF7】
 行動目的 脱出の為にイグニスと共闘。他の参加者は積極的に攻撃。
 所持品 バールのようなもの
 現在位置 岬の洞窟西の森林

 名前 イグニス【KOF】
 攻撃目的 脱出の為にセフィロスと共闘。他の参加者は積極的に攻撃&強姦。
 所持品 自分のマント(チェーンブレイドはリリスに没収されているらしい)
 現在位置 岬の洞窟西の森林

【不知火舞(餓狼伝説) 脱落】



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