無題
Now 19 students remaining.
Only 1 student can survive in this game.
Who is the Winner?
And now,"Doremi-Royale"final,first-step has begun.
* * *
ベリー・ベリー・ウェルダン。
炭化した焼死体を見て、小竹哲也【男子9番】は、うっ、とうめいた。
焼け落ちた聖堂。首のない焼死体・・・・・。
矢田まさる【男子25番】は言った。
「藤原。良く見ておけよ。人が死ぬってのは、こういうことだ」
* * *
矢田が拾ったのは「レーダー」だった。
「これからどうする?」
「……」
3人は考えた。選択肢は2つある。
1、この場で野宿する。
2、夜のうちに安全な場所まで移動する。
手持ちの武器は3つ。
パイナップル手榴弾が2発。
強力な麻酔針を射ち出す、腕時計型麻酔銃が1つ。
トンプソンを失ったのは痛かった。
正直言って、この装備では心許ない。
「だが、だからこそ、今のうちに移動しておくという考え方もある」
「そうだな……」
小竹は腕を組んでうなった。
今すぐここで眠った方が良いのか。もう少し移動した方が良いのか。
どちらにもメリットがあり、それなりのデメリットがある。
「ここで寝ましょう」と提案したのは、藤原はづき【女子23番】だった。
「レーダーがあるなら大丈夫よ。しばらくここで眠りましょう」
「そうだな」
とくに異存はない。
「まずはわたしが見張りに立つわ」
『いいから寝てろ。たのむから』
* * *
たっぷりと仮眠をとった3人は、朝早くから前進を開始していた。
先頭を行くのは、レーダーを持った小竹。
そのうしろにはづきがつき、矢田がしんがりをつとめる。
不意に小竹が舌打ちした。
「矢田。藤原。この先に『2人』いる」
「……」
「どうする?迂回するか?」
「いや、それは……」
「やめた方がいいわ」
はづきが言った。
「この辺りは禁止区域に囲まれているのよ」
「……」
「下手に大回りすると、引っかかる可能性があるわ。だから……」
「直前まで行って迂回だな。それしか方法がない」
「そうだな」
多少危険だが仕方がない。
3人は直進ルートを選んだ。
* * *
「1人目」はすでに死んでいた。
山本けいこ【女子28番】は首を半ばまで切断されて息絶えていた。
お世辞にも「キレイ」とは言えない死に方だった。
首の切断面はギザギザ。
遺体には何度も何度も斬りつけた跡があった。
「相当、苦しかっただろうな」
「……」
矢田はつまらないことを言って、ふん、と小さく鼻を鳴らした。
そして「2人目」は山内信秋【男子27番】だった。
もとは佐藤なつみ【女子12番】のものだったロザリオを、
しっかりと胸に抱いた山内の――首なしの――遺体を見て、
小竹はやりきれない思いになった。
山内・・・。山内、お前は・・・・。
お前はそんな姿になってまで、佐藤の帰りを待っていたんだな。
彼を命がけで愛した少女は、もうこの世にはいない。
殺してしまったのだ。――あの不幸な戦いで・・・・・、
遺体のそばには、鞘付きのナイフが転がっていた。
先のつぶれたペーパーナイフ。
鞘はボロボロだったが、刀身はまだ輝いていた。
なんとかまだ使えそうだ。
こんなものでも、ないよりはマシか。
矢田はそれを拾い上げた。
* * *
はづきはずっと泣いていた。
小竹も絶望的な気分だった。
山本と山内の、あの悲惨な死に方が目に焼きついて離れない。
あそこまで。――あそこまでしなければ生き残れないのか。
この、バトルロワイアルというゲームは・・・・・。
「朝のうちに進むぞ」
レーダーを構えた矢田が、つまらなそうにそう言った。
「動かない光点は死体だ。無視して先に進む。異存はないな?」
「……」
異存はなかった。
* * *
小竹哲也【男子9番】が歓声を上げた。
「レーダーに反応がある!」
最大望遠にした「ガダルカナル探知レーダー」。
その画面のはじっこの方に、固まってウロウロと動いている光点がある。
かなり接近しているらしく、光点も「まとまって1つ」に見えるが、
良く見ると1、2、3、4・・・・・、4つも光点があることが分かる。
「4人だ!4人もいる!」
小竹の歓声を受けて、矢田まさる【男子25番】が、へっ、と鼻を鳴らした。
戦わなければ生き残れない地獄のデスゲーム。バトルロワイアル。
ゲームは2日目に突入し、60人いた生徒たちも、その半数以下の19人にまで
減ってしまっている。
誰に殺されるか分からない。誰に裏切られるか分からない。
そんな状況だというのに、4人で行動している「馬鹿」がいる。
矢田は言った。
「そんな『馬鹿』はあいつらしかいねえな」
「……」
「間違いない。春風たちだ」
レーダーの座標を地図とコンパスで確認した結果、
その「4人」は島のほぼ中央でウロウロしていることが分かった。
「?あいつら、なんだってこんな所に……」
「迂回した結果だろう」
矢田が冷静に分析して、島の地図を指でなぞった。
「島の外郭は『禁止区域』でどんどんつぶされているからな。
それに追い立てられるようにして、島の中央に集まったんだ」
「なるほど」
小竹がうなずく。
実は「追い立てられている」のは、彼ら3人も同様である。
ゲームを引っかき回すための不確定要素、「禁止区域」。
時間の経過とともに増加していく「それ」のおかげで、行動半径はどんどん狭まってきている。
矢田たち3人は「レーダー」を手に入れることにより、より安全に、よりスムーズに
前進することが可能となった。
危険な区域を一気に駆け抜け、この島の中央まで追い立てられてきた3人は、
そこで、新たな「4人」の「生存者」とめぐり合うことが出来たのである。
「どうする?すぐに合流するか?」
「いや。あまり急ぐのも良くない」
矢田はあくまでも慎重論を唱えた。
「こんなことを言いたくはないが――、
この激戦つづきだ。さしもの春風たちも、相当、殺気立っていると思う」
「そんなこと……」
ない、と言いかけてやめた。
矢田の言うことにも一理ある。
「とにかく、こっちに戦意がないことを示さないと……」
「具体的にどうするんだ?」
「武器を捨てたらどうかしら?」
藤原はづき【女子23番】がそう提案した。
「どれみちゃんたちの前で武器を捨てるの。それで分かってもらえると思うわ」
「武器って?これか?」
小竹がポケットから手榴弾を取り出した。
矢田は呆れたように言った。
「手榴弾はまずいだろう」
「そりゃそうだ」
むしろ「抵抗の意志あり」と見なされて、攻撃される可能性が高い。
「かと言って、このレーダーを捨てても分かってもらえないだろうし……」
「俺の腕時計を捨てても、もっと分かってもらえないだろうな」
矢田は左腕に装着した腕時計――腕時計型の麻酔銃――を見やって、はァァ、と
ため息を吐いた。
「どうしてこう、変な武器しか残っていないんだろうな……」
「う〜ん……」
手持ちの武器は5つ。
ガダルカナル探知レーダー。
手榴弾が1つずつ。
鞘付きのペーパーナイフ。
そして、腕時計型の麻酔銃。
「矢田。その銃、使えるのか?」
「……あァ。弾はあと2発残っている」
矢田は腕時計を見やって、「効果は抜群だった」、と告げた。
「浜田は一瞬で失神した」
「……」
「説明書によると――、
個人差はあるが、だいたい2〜3時間は眠らせることができるらしい」
「それは、人体に有害なんじゃないのか?」
「武器だからな。有害に決まっている」
「へえ。それって麻酔銃なんだ」
「……」
「素敵な武器を持ってるのね。――それをこちらに渡してくれる?」
3人はゆっくりとふり返った。
目の前に、中山しおり【女子18番】が立っていた。
無抵抗の萩原たくろう【男子17番】を射殺したブローニングHPを構え、
しおりはにっこりと笑って言った。
「武器を捨てなさい」
「……」
「その腕時計も。レーダーも。
小竹くん。その手榴弾もよ。全部こちらに渡してちょうだい」
「……」
「おとなしく渡してくれれば、あなたたちに危害は加えないわ。
それは約束してあげる」
「……」
「これは取り引きよ。どう?悪い話じゃないでしょう?」
悪い話ではなかった。
不覚をとった。
レーダーを「最大望遠」にしていたのが敗因だった。
索敵範囲を広げたので、その分、情報の精度が落ちてしまったのだ。
矢田たちは3人で行動していた。
レーダーの中心の「光点」は、ぴったりとくっついて、ほとんど「1つ」になっていた。
だから、中山に追われていることに気づかなかった。
1つだと思っていた光点は、良く見ると1、2、3、4・・・・・、4つあった。
矢田たち3人はブローニングを向けられて、なす術もなく立ち尽くしていた。
しおりはにっこりと笑って言った。
「武器を渡しなさい」
「……」
「その変なレーダーも全部よ。抵抗すると撃つ。これは脅しじゃないわ」
「……」
まさるくん!?
中山の言う通りにしろ。
幼なじみの2人は、アイコンタクトだけで通じた。
だが。
小竹はそうはいかなかった。
「うわァァァァ!?」
絶叫。
小竹は手榴弾を振りかぶり、その安全ピンを音高く引き抜いた。
ッ、ピィィンッッッ!
「!?」
しおりが動いた。
ブローニングの銃口は――、
小竹ではなく、藤原の方を向いて、止まった。
「!?」
「動かないで!藤原さんを撃つわよ!?」
「なっ!?」
「あんたより先に藤原さんを撃つ!それでもいいの?それでもいいのね!?」
「う……!」
小竹がうめいた。
ダメだ。中山は本気だ!
小竹は引き抜いた安全ピンを元に戻した。
どのみちこのままでは爆発しない。
底を打ちつけて、1、2、3。
そのタイミングだと、説明書には書いてあった。
小竹はがっくりとうなだれて、手榴弾をわきに捨てた。
矢田は腕時計をはずして、それをしおりの足元に放り投げた。
しおりがそれを拾って、愛しそうに頬擦りした。
しばらくそうやってから、自分の左手に巻きつける。
矢田は言った。
「約束は守れよ」
中山は言った。
「そのつもりだったけど、気が変わったわ」
「……」
「でもね。矢田くん。――あなた『だけ』は、助けてあげる」
本当はね。最初からそのつもりだったの。
しおりがブローニングを小竹に向けた。
さようなら。小竹くん。
矢田の反応は素早かった。
「小竹!走れ!」
「!?」
身を屈めて突進。ショルダータックル!
「ぐっ!?」
しおりがうめいた。
一瞬の、空白。
「行け!藤原を連れて逃げろっ!」
「!」
小竹は走った。
はづきの小さな手を引いて走った。
はづきが悲鳴を上げた。
「まさるくん!まさるくん!」
「走れ!いいから走れ!」
「俺も必ずそこに行く!」
「行け!行って春風たちと合流しろ!あいつらといっしょに……!」
生きのびろ藤原。
お前だけは。絶対に。
・・・・ずんっ。
腹に響くにぶい衝撃。
撃たれた、と思った。
矢田がずるりと崩れ落ちた。
ブローニングの引き金を引いたしおりが、呆然とした表情で立ち上がる。
硝煙たなびく銃口を見やって、しおりは弱々しく首を振った。
矢田くん。矢田くん・・・・あなたは・・・・!
あなたはやっぱり、藤原さんのことを・・・・・・!
はづきはもう見えなくなっていた。
殺すつもりだったのに。まんまと逃げられてしまったのだ。
しおりは激怒した。
「許せない……!」
「許せない!矢田くん!あなたは!あなただけは……!」
しおりは2度3度と引き金を引いた。
「矢田くん!どうしてなの!?どうしてあの女なの!?」
しおりは撃った。
カシン、カシン、カシン!
弾切れになっている!
それでもしおりは撃ち続けた。
カシン、カシン、カシン!
「どうしてあんな女を!どうしてあんな女を!どうして……!」
「やめて!」
「!?」
鬼の形相で引き金を引き続けるしおりの前に、1人の少女が飛び出した。
「やめて!中山さん、もうやめて!」
「……」
藤原はづきだった。
はづきは矢田の体にすがりつき、やめて、もうやめて、と叫んだ。
「もうやめて……、お願いよ……、」
「……」
藤原さん。
しおりはブローニングを持ち上げ、素早い動作で弾倉を入れ替えた。
カシャン。シャン。
しおりは笑った。
どう?うまいもんでしょう?
わたし、必死で練習したのよ。
藤原さん。・・・・・あなたを殺すために・・・・。
「藤原さん」
しおりはやさしい声で言った。
「死について、考えたことある?」
しおりは言った。
「死ぬってね。とっても空っぽなことなのよ。
そこには天国も地獄もない。本当に『何も』ないのよ」
言いながら腕時計を操作し、その竜頭を軽くひねる。
ひゅっ。
射出された麻酔針は、狙いあやまたず、はづきの首筋を直撃した。
あまりにも無造作な「精確な」一撃。
はづきががっくりと崩れ落ちた。
その身が矢田の上に覆い被さる。
「死ぬのはこわいでしょう?
だからこれは、せめてものサービス」
「全身麻酔よ。ゆっくりと眠りなさい。大丈夫よ。痛くしないから」
「この銃を口の中に突っ込んで。弾がなくなるまで撃ち尽くしてあげるわ」
「……」
はづきは片ひざをついていた。
しおりが何を言っているのか、聞き取ることはできない。
強烈な眠気。
まともな思考ができない。
もう耐えられない。まぶたが重い。
眠ってしまえ。眠ってしまえ。
死ぬってね。とても空っぽなことなのよ。
死ぬのはこわいでしょう?だから・・・・眠ッテシマエ・・・・。
「まさるくん……」
・・・・・まさるくん・・・・・。
はづきは最後の力をふりしぼって叫んだ。
しおりはどんどん近づいてくる。
スカートのポケットを探った。
硬いものに手がふれる。
それは「護身用」にと矢田に持たされた――、
「藤原さん。さようなら」
しおりは笑って、ブローニングを向けた。
背を向けて片ひざをついているはづきは、ピクリとも動かない。
さようなら。藤原さん。
しおりはブローニングの引き金を・・・・・、
はづきが動いた。
ばっ!
いきなり立ち上がったはづきを見て、しおりは激しく狼狽した。
ば、馬鹿な!?なんで立ち上がれるのよっ!?
・・・・これは強力な麻酔銃じゃなかったの・・・・!?
引き金を引くのも忘れて、向かってくるはづきを呆然と眺める。
はづきのわき腹に「突き立っている」ものがあった。
それは、根元深くまで刺し込まれた、ペーパーナイフであった。
「ば……!?」
「なかやまさん……」
はづきの思考は止まっていた。
自分が何をしているのか、もはや彼女は分かっていない。
わき腹にはペーパーナイフ。
血をドクドクと垂れ流しながら、はづきは薄ら笑いすら浮かべて・・・・、
しおりに、そっと抱きついたのである。
もつれ合う2人の少女。
はづきの手には、1発の手榴弾が握られていた。
しおりは絶叫した。
「ふ、藤原さん!?あなたは!あなたはっ!?」
「なかやまさん……」
「いっしょに、いきましょう……」
いいか藤原。ピンを抜いたら衝撃を与えて・・・・・、
1、2、3。
* * *
しおりは思った。
どうして?どうしてこんな結果になってしまったの?
死ぬのはいや。わたしは死にたくない。
わたしはただ、死にたくなかっただけなの。
死。からっぽの存在。なにもない。なにもない。
忘れられてしまう。このままでは忘れられてしまう。
わたしのことを忘れないで・・・・・・、
わたしはまだ死にたくない・・・・・、
わたしはまだ・・・・・・、
死にたくなぁぁぁぁいぃぃぃ!
* * *
どこかで誰かの声がする。
あれは、まさるくんの声だろうか?
「何で戻ってきたんだ……、はづきぃぃ……!」
まさるくんの手のぬくもりを感じる。
はづきはにっこりと笑った。
やっと「はづき」って呼んでくれたね。まさるくん。
* * *
徐々に冷たく、重くなっていくはづきの体を受け止めながら、
矢田まさるもまた、死にかけていた。
手も腹も血で濡れていた。
その半分は自分の血。もう半分ははづきの血。
・・・・いつからだろう。はづきのことを「藤原」と呼ぶようになったのは・・・・。
小学校に上がると、急に照れくさくなって、つい「藤原」と呼ぶようになった。
それからはずっと「藤原」だった。
「はづき……、はづき……!」
「はづき……はづき……」
ずるり。
はづきの手が「取れた」。
矢田はそれには気づかなかった。
矢田は思った。
どうして戻ってきたんだ。
はづきお前は。どうしてそんなに馬鹿なんだ。
はづき、お前は・・・・・・、
どうして・・・・、そんなに馬鹿なんだ・・・・・。
どこかで、何かの音がする。
あれは、トランペットの音だろうか?
はーるがきーたー、はーるがきーたー、どーこーにー、きた・・・・・、
下手くそめ、と矢田は思う。
息の吹き方がなっていない。まだまだ練習が必要だ。
どこかで、何かの音がする。
あれは、トランペットの音だろうか?
ドードー、ソーソー、ラーラー、ソー……、
あれは「きらきら星」だ。・・・・どこからか、きらきら星が聞こえる。
きーらーきーらーひーかーるー、
よーぞーらーのーほーしーよー、
きーらーきーらーひーかーりー、
きーらーきーらーひーかーりー、
わーたーしーのーうーえーでー、
やーさーしーくーひーかーるー・・・・・・・・・・・・。
どこかで、誰かの、笑い声がはじけた。
分かった!
きらきら星は、はづきの曲なんだね・・・・・・。
* * *
小竹が駆けつけたときには、すでに「すべて」が終わっていた。
絶命した3人を見やって、小竹哲也は慟哭した。
「うわァァァァァ!」
なんでだ!
どうしてだ!
どうしてこんなことに!?
こんな結末しかなかったのか。
もっと他に方法はなかったのか?
どうしてだ矢田。
どうして戻ったんだ藤原。
どうしてこんなことになっちまったんだ、中山ァ・・・・・・!
「どうしてだ!どうしてだ!どうし・・・・!」
たん。
小竹の無防備な背中を、コルトの無慈悲な一撃が襲った。
「……えっ……!?」
小竹は血を吐いてたおれた。
胸を抑えた右手は、自分の血で真っ赤に染まっている。
死の直前に小竹は見た。
コルト1911Aを握っているのは、彼の良く知る、赤毛の少女だった。
長門かよこ【女子17番】。
かよこは冷然と見下ろしてきた。
その瞳に「意志の色」はなかった。
たん。たん。――さらに2発。
額と腹に弾丸を受けた小竹は、薄れ行く意識の中で思った。
なんで哀しそうな目をしているんだ。どじみ。
目の前の赤毛の少女が、「ここにはいない」べつの赤毛の少女と重なってぼやけた。
どうしてそんな目をするんだ。どじみ。
そうか、分かったぞ。
どうせ誰かにいじめられたんだろう。
お前は馬鹿でドジだからな。仕方ねえやつだな、まったく。
「どじみ・・・・」
思い出すのは、あの遠足の班分けのこと。
お前といっしょの班になりたい男子なんて、どうせ1人もいないだろうからな。
仕方ねえから、俺が同じ班になってやってもいいぜ?どじみ?
なぜあんな言い方をしたのだろうか。
もっと素直になれば良かった。
もっと素直に言えば良かった。
次に生まれて来るときは・・・・、
もう1度、あのときからやり直せるのならば。
自分はきっと、こう言うだろう。
お前といっしょの班になりたい男子なんて、どうせ1人もいないだろうからな。
仕方ねえから、俺が同じ班になってやってもいいぜ?どじみ?
・・・・・・変わらない・・・・・・。
自分はきっと変わらない。変われない。
だけどどじみ。俺は・・・・・俺は・・・・・!
とどめのイングラム。
顔のほとんどをふっとばされて。――小竹の思考は、それなりに止まった。
* * *
「お手柄だよ。長門さん」
林野まさと【男子29番】は、満足げにパチパチと手をたたいた。
「これで春風さんを狙う悪いやつが減ったね。しかも4人もだ」
「……」
「おっと。こうしちゃいられない。さっそく次のところに行こう」
「……」
「?どうかしたのかい?」
「何でもないわ」
林野に内緒で「ガダルカナル探知レーダー」を拾い上げた長門かよこは、
それを自分のデーパックの中にすべりこませた。
これはいつかは役に立つ。
それは、かよこの直感であった。
* * *
And now,15 students remaining.
Who is the winner?
Who can survive in this game?
"Doremi-Royale"final is to be continued......
【男子9番 小竹哲也 死亡】
【男子25番 矢田まさる 死亡】
【女子18番 中山しおり 死亡】
【女子23番 藤原はづき 死亡】
【残り15人】
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