無題






『ゲームだと思ってたんだ…』
森川だい【男子24番】は今でもありありと「その時」の事を思い出す。
思い出してしまう。
渡された武器は銀色に光るリボルバーだった。
「最近のモデルガンはリアルだなぁ」としか思っていなかった。
重さといい、質感といい…。
シリンダーに収められている弾丸の弾頭の色なんて「本物みたいだ」とも。

…だから道の途中で会った中田ごうじ【男子16番】と
瀬川おんぷ【女子14番】の事を話しているうちに、
中田が逆上して「銀色に光る銃」を取り出したのも芝居だと思っていた。
「…お…おんぷちゃんに近づくなぁ!」そう言ったと思う。
まるで「決まって」いなかった。全身が震えているのが一見して分かるほどだ。
だから俺は、そう「映画のようにカッコよく銃を構えて」引き金を引いたんだ…
「おもちゃにしては、重 い 引 き 金 だ な …」と思いながら…

風景が飛んだ。
その理由が実弾が発射した事による衝撃だと分かったのは、
先ほどまで立っていた中田が頭から血を流して倒れて…死んでいたからだ。
信じられなかった。怖くなった。銃も荷物も投げ捨ててその場を走り去った。
どれほど走ったか分からなくなった頃に声を掛けられた。「森川君!」
驚きのあまり足が絡んで転んでしまう。
「…ち、違う!知らなかったんだ!あれが本物だったなんて…
 …ああ…撃たないでくれ…頼む!」
「落ち着いてよ、森川君。僕は君を撃ったりはしないから。とにかく落ち着いて」
涙のせいで歪んで見えたもののその顔には見覚えがあった。
2組の宮元まさはる【男子23番】だった。

【男子16番 ・中田ごうじ死亡】
【残り29人】




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