無題






長門かよこ【女子17番】 1日目:夕方

かよこは、展望台へ向けて駆け出した。
飛鳥ももこ【女子1番】の話によれば、そこに春風どれみ【女子21番】がいると言う。
(…どれみちゃんに会いたい。会って話がしたい。どれみちゃんなら、わたしの苦しみを分かってくれる…)
イングラムM11を手にしたままだと、走りにくい事に今更ながら気付く。
改めて支給されたディパックを見ると、スリングがあったので取り付けた。
イングラムM11を肩から下げる。これで走りやすくなった。
(わたしは、やっと、どれみちゃんに会えるんだ!)

「それ」を見かけた時、かよこは愕然とした。
どれみが、足を傷めている玉木麗香【女子16番】に肩を貸していたからだ。
かよこの心は一気に冷え切ってしまう。
(…いつも…いつも、そうだ。どれみちゃんの周りにはいつも友達がいる。なのに…わたしには…)
二人の姿は展望台へ吸いこまれていく。
茫然たる想いでそれを認めると、おぼつかない足取りで展望台に近づく。
そして展望台の外壁に、掌を、額を押し当てた。
(…この壁の向こうに、どれみちゃんがいる。でも、ほかの人もいる。
 その人はきっと、わたしとどれみちゃんが会う事を厭がるにちがいない…どうしよう…)
のちに、かよこは壁を背にして膝を抱えた。
(…どうして、わたしはいつも、こうなんだろう…こんなにも、どれみちゃんに会いたいのに…)

──そのままの姿で、かよこは、1日目の夜を過ごした。
その夜、かよこは厭な夢を見た。目が覚めた時には中身の事は忘れてしまっていたが。

寝汗による全身を包む不快感… それが長門かよこ【女子17番】の2日目の始まりだった。



前話   目次   次話