無題
春風どれみ【女子21番】は玉木麗香【女子16番】を、ほとんど背負いながら歩いていった。
「しっかりしなよ、玉木。もう少しだから」
「春風さん、わたくしのことはもう・・・・春風さんだけ先に」
「そんなことできないよ、とにかくもうすこしだから」
玉木は負傷した足の怪我が悪化していた。
足首は紫色に膨れ上がり、さらに熱まででてるようだ。
ほとんど玉木を背負うように、どれみは歩いていった。
そしてようやく展望台につくことができた。
「どうやら、誰もいないみたい」
どれみは辺りを警戒しながら展望台へと入っていった。
しかし、二人は気づかなかったが、実は二人をつけている一人の人物がいた。
それは長門かよこ【女子17番】だった。
「ハァハァ、どれみちゃん、どれみちゃん・・・・・・」
かよこは最初どれみを見かけた時に、声をかけようとした。しかしすぐに玉木の
存在に気づき、そのまま黙って後をつけていた。
「どうしよう、早くどれみちゃんにと一緒にいたい。でも玉木さんがいるし・・・どうしよう、どうしよう」
かよこは次第に思考のループに入っていった。どれみちゃんと一緒にいたい、
でもどれみちゃんの周りにはいつも友達がいる。そしてその友達はわたしのことを
殺そうとするに違いない。でもわたしはどれみちゃんと一緒にいたい。
そして、かよこは一つの決断をくだした。
一方、どれみと玉木は展望台に入ると、すぐにエレベーターのボタンを押した。
幸いなことに、電気はまだ生きているようだった。すぐに扉は開き、そのまま乗り込むと、すぐに最上階のボタンを押した。
上の展望室につくと、多分観光客の休憩に使うのであろう長いすが置いてあり、
そこに玉木を寝かした。
どれみは薬がないかと土産物売り場だったカウンターや、奥の事務所を探した
が、何も見つけることはできなかった。
あきらめたどれみは水で濡らしたハンカチを、たまきの額におくことしかできなかった。
やがて玉木は横になったためか、寝息たてて眠りはじめた。
それにつられて、どれみも壁にもたれて眠った。
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