無題
谷山将太【男子14番】が受け取ったナップザックの中に武器らしい物は入っていなかった。
愕然とした。身を守る術すらない…?
半狂乱になりながら中をあさっているうち一枚の紙が入っている事に気付いた。
それにはこの島の見取り図が書いてあり南端の一角に印が付いていて、
【丘の上の小屋の中】と書かれていた。
――銃声が聞こえる。単発のものもあれば、続けざまに聞こえるものもあった。
生徒どうしが殺し合いをしているとは思いたくは無かったが、
少なくとも銃声がひとつ轟くたびに、誰かの命が奪われているに違いない。
そして次に狙われるのは自分かもしれない…
そう思いながら、紙に書かれている場所へ林の中を縫って走り続けた。
見ず知らずのこの場所で『そこに行けば何かがある』事を信じて。
そこは丘というよりは、ゆるやかに地面が盛り上がっているだけ、のように思えた。
北と東側の木々は少ないから余計にそう思えるのかも知れない。
頂きから南に海が見え、途中からは崖になっているようだ。
小屋はすぐに見つける事が出来た。一度周りを確かめたが人気は感じられない。
中に入ってすぐに、紙の指し示す物が布に覆われて、あった。
――その細長いシルエット… 布をはぐって、息を呑んだ。
『その銃』は先ほど教室で見た専守防衛軍軍人が下げていた銃や、
ホルスターに収まっていた拳銃とは、明らかに性格が異なる銃だったから。
…それが「SSG69」と呼ばれている事は、将太の窺い知れる事ではなかったが。
(取り付けられているスコープは完全に固定されてる)
『……これで戦える』
そう思ってしまった自分を、わずかに呪いながら。
前話
目次
次話