人食い植物の夜






マンイーターは気が付くとジャングルの中にいた。
いやマンイーターというのは種族名なのだから、
ただマンイーターと呼ぶのはそこらの人を人間と呼ぶようなものでおかしいのかもしれないが、
今はマンイーターとしか呼びようがないのでそう呼称しておく。

マンイーターがいるのは故郷に近い、というかそのもののジャングルの中だった。
だがその場に漂う空気の違いと、先ほどあった出来事のおかげでもといた場所とは違うとわかる。


――確か怪我をしてしまい、いつものように1週間地中に潜って眠ったなのだが…


別に人間の言葉が理解できないわけではないが、
寝ぼけていたマンイーターは最初に切間創一によって為されたゲームの説明をよく聞いていなかった。
なので、マンイーターは変な所につれてこられたことと、人間が沢山いたことしかわかっていない。
ただこの先送られる地で、他の人間たちとともに『殺し合え』と言われたことだけは聞いた。




『…殺し合い?』




その言葉で眠る前のことを思い出した。
木を切った人間たちを襲っていたら、予想外に腕が立つ奴がいて触手を切られてしまったのだ。
人間にしてはなかなかやるやつで複数な上に武器を持っていたのでやられてしまった。
住処を荒らした上に身を傷つけた人間のことは非常に憎らしく、
触手の1本や2本放っておいてどこまでもそいつらを追って殺しやろうとも思ったが、
人間は数がいたし逃げ場はない場所だったので傷の回復を優先しようと判断した。

起きたらあいつらを皆殺しにしてやる予定だったのに。

思い出していくと同時に怒りがどんどんつのっていく。
つまり、あの憎らしい人間どもを逃がしてしまったということではないか。
自分が今違う場所にいるということはそういうことだ。
いったいどういう理屈で移動させられたのかはわからないが、獲物が手の届く場所から消えてしまった。
その事実に、腹の虫がおさまらない。

そういえばさっきの場所にも人間たちが大量にいた。
ただでさえ人間が多いのは嫌いなのに、このむかつく状況ではさらにしゃくに障って仕方ない。
もし人間を見かけるようなことがあったらどうしてくれよう。
マンイーターの心は人間という種族全体への殺意で埋まっていく。





さいわいこの場は慣れ親しんだ故郷のジャングルに近い。
豊かな自然、多彩な植物…体によく馴染む。
今は夜だからできないが、日が昇ったら光合成をして力を蓄えよう。
そして、このジャングルに踏み込んだ人間どもを殺してやるのだ。

このバトルロワイアルというゲーム。
それが何なのか、マンイーターにはわかっていない……だが問題はない。
わかっている事は人間を殺したいという事。
それでいい。大当たりだ。このゲームの主題はようはそういうことなのだから。

――ああ、そういえば腹も減ったな。人間を見つけて殺したら……喰ってしまおう。



こうして、ジャングルには食人の化け物が放たれた。



【D−3 ジャングル/一日目 深夜】

【名前】マンイーター@ハレグゥ
【状態】空腹
【持ち物】ディパック(基本支給品一式、不明ランダム支給品0〜1)
【思考】
1:ジャングルに踏み込んできた人間を殺して喰う。
2:人間の気配がない間はこの場にとどまって朝を待ち、日が昇ったら光合成をする。
3:自然は大切。

*バトルロワイアルのルールを把握していません。
一応デイパックは持っていますが、必要なものだと思っていないので移動するときは放置していく可能性があります。



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