黒白
強くなりなさい、と母は言った。
それが、司狼神威の原点である。
愛する者を守れるように、強く。
迷わず戦えるように、強く。
それがエゴだと分かってはいた。
愛する者を守るために振るわれる力など結局のところ、それ以外のすべてを踏みにじるための力でしかない。
それでいいと母は言っているのだと思ったし、神威自身もまた、そのことを肯定していた。
何かを愛するという決意は、その他のすべてを殺す覚悟だ。
そのための力を、神威は持っている。
尋常ならざる異能。
戦い、殺すための力。
だと、いうのに。
守りたいものなど、もうほとんど残っていない。
母は地球の影贄となって炎に焼かれ、死んだ。
その妹、叔母の時鼓は神剣を生み出すために五体を四散させ、無残な躯となった。
桃生のおじさんは神剣を守ろうと戦って殺され、紗鵺おばさんは母の代わりにバラバラになって死んだ。
そして、桃生小鳥。
幼い日の大切な時間。
その全部を一緒に過ごした少女。
小鳥もまた、死んだ。
もう一人の大切なもの、小鳥の兄、桃生封真。
封真は小鳥を刺し貫き、そうして何処かへと消えた。
優しかった封真を変えたのは、神威の『選択』であったという。
人間を護り、地球を殺す『天の龍』となるか。
地球を生かすために人間を滅ぼす『地の龍』となるか。
神威の選択がどちらであったにせよ、対となる『龍』の座を埋める、もう一人の神威。
それが封真であり、その存在の意味であり、だから封真のこれまでの時間に意味はなく。
残忍で冷酷な、『地の龍』としての封真に変わったのだという。
誰も彼もが死んでいく。
地球の命運とやらのために、大切なものが死んでいく。
冗談ではない、と思う。
そんなもののために、大切な人たちが死んでいく。
地球の如きと、引き換えに。
赦せるはずも、なかった。
だから戦おうと思った。
大切なもののために。
最後に残った、大切なもの―――封真を取り戻すために。
たとえばそれが、地球を殺し、罪もない人々を死に追いやることであろうとも。
覚悟を決めた、はずだった。
なのに。
―――俺は一体、何をやっている。
見上げた空には銀色の月が浮かんでいる。
喪服の如き黒衣の制服に身を包んだ少年、司狼神威はため息をつきながら地図を広げる。
コンパスの針によれば北東の方角、星空を隠すように稜線が広がっていた。
であれば、おそらくは今座り込んでいるこの奇妙な建物が『肉壁』とやらだろう。
月明かりの下、走り過ぎる車の影一つない大通りの脇でぼんやりと白く浮かび上がるそのドーム状の建物は
周囲にひどく異彩を放っている。
天井の高い二階建てほどの全高と、おおよそ四、五十畳といった広さ。
ぐるりと周ってみても扉のようなものは見当たらず、仕方なく神威はその不気味な外壁に
寄りかかるようにして座っている。
制服越しに伝わってくる背中の感触はぶよぶよとしていながら同時にひんやりとして、気味が悪い。
考えをまとめようと腰を落ち着けたというのに、逆に妙な不安感が湧き出してくる。
他の『七つの封印』の面子のように結界を創り出すことができればまた違うのだろうが、と神威は自嘲する。
今はまだいい。だがこの先、休息や緊急避難が必要になる場面はいくらもあるだろう。
そんな場合は―――。
と、そこまでを考えたとき、神威は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。
悪寒、というレベルではない。
氷でできた針を脊髄に直接打ち込まれているような、激痛に近い直感。
「……誰だっ!?」
叫びざま振り返る、その手には既に『力』が結晶している。
「ふぅん……よく気がついたね、これでも気配を消すのは得意な方なんだけど」
「子供……!?」
神威が驚いたように目を見開く。
その眼前にいたのは、果たして少年である。
日本人ではなかったが、まずローティーンより上ではない年頃。
白皙の美少年、といえる整った目鼻立ちではあったが、その容姿には一点、異様がある。
頭髪が、白いのだった。
アッシュブロンドや銀髪といった類ではない。
その一本一本、根元から先端に至るまで偏執的に脱色を繰り返したように、色素というものがない。
「……やっぱりこの場に集められた以上、それなりの『意味』を持っていると考えるべきなのかな?」
中性的な美貌を歪めて睨む神威の剣幕を受けて、白髪の少年は物怖じした様子もない。
それどころか口元には微笑みじみた表情すら浮かんでいる。
「お前……、人間じゃないな……?」
「……どうして?」
「式神連中と同じ匂いがするんだよ……!」
肩をすくめた少年に向けて、神威が手に集めた『力』を撃ち放つ。
容赦も躊躇もない、相手を滅するための一撃。
だが。
「な……!?」
「そういう君は何か……そう、大規模な術式のトリガーなのかな」
目を細めてみせた少年が、くすりと笑う。
何気なく上げられたその片手に、神威の放った『力』が苦もなく受け止められていた。
その手が握られると、『力』もまた雲散霧消していく。
「君の生死……いや、存在そのものが鍵、という感じだね。
『運命』をすら改変する規模の術式……だけどその『対価』、捻じ曲げられた世界の歪みは莫大だ。
そのすべてが逆凪……『報い』となって君を襲う。辛い生だね、お互いに」
夜の闇を背景に紡がれる言葉の意味は、その半分も神威に届かない。
力を防がれた驚愕と唐突な饒舌とが、神威を困惑させていた。
「何を……言っている!?」
「おや、まさか気づいていないのかい? 君をその術式に組み込んだ術者は随分と非道だね。
そうだな、分かりやすく言うなら……君は存在するだけで周囲の人間を不幸にしてきたはずだ」
「―――!?」
―――存在するだけで周囲の人間を不幸にしてきた。
その言葉は、鋭い刃となって神威の胸を切り裂き、その奥にある心を刺し貫いていた。
何となれば、その指摘は事実であり―――そしてまた、神威自身がそのことに思い至りながら、
その重圧に耐え切れず目を背けてきた、正にその一事に他ならないがゆえである。
自分を愛してくれた母、司狼斗織。
最後に残った血縁者、叔母の真神時鼓。
厳しくも優しかった桃生鏡護、桃生紗鵺。
たいせつなもの。桃生小鳥。
彼らの、彼女らの悉くは凄惨な最期を遂げた。
そしてたった一人、生き残っている人間―――桃生封真は、神威の『添え星』としてかつての自分を忘れ、
その存在自体を塗り替えられた。
そのすべてが『地球の命運』、ひいては神威自身を中心として繰り広げられた悲劇であることは
疑いようもない事実である。
神威―――『神の威を代る者』。
神意の代行者。
運命の歯車の、その中心にある唯一の存在。
だから、存在するだけで。
存在するだけで、周囲の人間を捻じ曲げる。
不幸に陥れ、悲惨な最期を迎えさせる。
望んだわけでもなく。
ただ、選ばれただけで。
存在を罪と、規定される。
「……関係ない」
絞り出すような声は、悲鳴に等しい。
「そんなもの関係ない……! 俺は、そんな……! お前に何が分かる……!
帰るんだ! 俺は帰って、封真を取り戻す!」
「……僕らを皆殺しにして、かい?」
「仕方ないだろう……っ!」
叫び返して、思う。
そう、仕方がないのだ。
身勝手な願いだ。
利己的な望みだ。
だが、それを誰が責められる。
運命の理不尽に抗うことを、誰が責められるというのだ。
否―――誰に責められても構わない。
誰にも理解されなくても構わない。
その全部は、運命に膝を屈しろという声。
抗わず死ねと、光に手を伸ばすこともなく朽ち果てろと、それを命じる声だ。
そんなものに、理解される必要はない。
誰に責められても。
誰にもこの望みを分かってもらえなくても。
俺はただ、『封真』を取り戻す。
世界にはもう、封真しか残されていないのだから。
そのために誰を犠牲にしようとも。
そのために、どれほどの血が流れようと、どれだけの悲嘆が叫ばれようと。
俺の明日は―――俺にしか、選べない。
司狼神威の、それが決意のかたちであった。
「ふぅん、やる気になったみたいだね」
「……ああ、俺はお前を殺す。お前だけじゃない。ここに呼ばれた全員を殺して、東京に帰る。
それが俺の、たった一つの願いだ」
「やっぱり君は……不幸を撒き散らす存在だね」
「言っていろ……!」
神威の手に集まった『力』が、衝撃波となって放たれる。
つい、と一足で数メートルを飛び退ってそれを躱した少年が、
「バーシリスケ・ガレオーテ・メタ・コークトー……」
不可思議な呟きを漏らす。
が、その奇妙な抑揚の言葉を遮るように神威が地面を蹴り、間合いを詰める。
一瞬でクロスレンジに飛び込むと、振るうのは右の打ち下ろし。
神威とて上背のある方ではないが、さすがに少年には勝っている。
対処しづらい方向から打ち込む拳には、更に『力』が渦巻いていた。
コンクリート壁も容易く砕く威力を乗せた拳が、少年の頭蓋を粉砕すべく迫る。
ガードした腕ごと砕くような一撃に対し、少年は迫る拳の内側に左の腕を添えるような動き。
そのまま、体の外側へと力のベクトルを受け流す。
表情一つ変えぬアウトサイドへのパリィ。
力を逸らされた神威はしかし、体勢を崩さない。
重力を無視するように空中で身を捩ると、流れるような蹴りを少年に向けて放つ。
まるで見えない足場が宙に浮かんでいるかのような、蹴り足に十分な体重の乗った一撃。
事実、神威は空中に立っていた。
のみならず、慣性や作用反作用や、諸々の物理法則の悉くを捻じ曲げて、神威は浮かんでいる。
念動。
不可能を無視し、思念という理不尽をこの世に具現する異能こそが、司狼神威の力であった。
「……!」
初めて、少年の表情が僅かに動いた。
予想だにしなかったというような、微かな驚愕がそこに浮かんでいる。
「どうした、俺みたいな相手は初めてか、西洋魔術師?
……詠唱なんかさせるかよ!」
神威の脚が吸い込まれるように少年の顔面へと迫り、
「―――だろうね」
その眼前で、ぴたりと止まっていた。
少年は指一本たりとも動かしてはいない。
ただ、その白皙の美貌と神威の脚との間に浮かぶ何かが、恐るべき威力を秘めた一撃を受け止めていた。
夜の闇を薄く照らす、複雑な文字列と幾何学の集合体が描き込まれた円形の紋様。
半透明に光るそれが、幾つも宙に浮いて少年と神威とを隔てている。
「物理障壁さ。……僕みたいな術者は初めてかい、サイキッカー」
「……ッ!」
舌打ちをして飛び退ったのは神威である。
見えない足場を蹴るように、一気に数メートルの距離を開く。
「なら……これで、どうだ!」
言いざま、神威の手に『力』が集まっていく。
物理法則を無視し、あらゆるものを破砕する異能。
雷光にも似た光を纏って、その『力』が集約される。
「受けてみるか、その壁で!」
叫んだ神威の手から、念動の渦が解き放たれた。
真っ直ぐに少年を目掛けて飛ぶ破壊の化身は、その間にあるすべてを呑み込み、粉砕していく。
轟、と音を立てて地割れが起こる。
巻き上げられた砂礫が『力』の渦に巻き込まれ、渦を形成する要素の一つとなって威力を増す。
その様子を目にして、神威には一つの確信が生まれている。
―――やはり『力』は弱まっている。
制限、とあの黒服の男は言っていたか。
空を翔ける力、地を割き敵を打ち砕く力、その悉くが意図した威力を発揮しない。
先ほど少年が使ってみせた『壁』、あれと同じような身を護る力も、おそらくは弱体化しているだろう。
だがそれは相手とて同じことと、神威は考えている。
もしもこの少年と自分が本来の力で戦っていれば、半径数百メートルは簡単に灰燼に帰していた。
それをさせぬための制限。
そしてそれが同時に、殺し合いを加速させるための制限であるとするならば―――おそらくは、
破壊の力よりも大きく、護りの力は弱められている。
何となれば、鎧兜と木刀で戦う姿よりも生身と白刃で相対する姿の方が、高みの見物を決め込む連中にとっては
愉快に決まっているからだ。
だからこその先手。
常に攻め手を維持する側の有利を、神威は考えていた。
大気が、大地が渦となって、少年に迫る。
よほど『壁』に自信があるのか、少年は動こうとしない。
それを愚策と嘲り、神威は己が勝利を確信して笑う。
果たして渦が、破壊の力が少年を呑み込もうとした、その瞬間。
ぱしゃり、と音がして。
白髪の少年が、割れ爆ぜた。
ぴ、と返り血の代わりに神威の頬に飛んだのは、透明な飛沫。
からりと軽い音は、ペットボトルの空き瓶が地面に落ちた音。
「―――水!?」
悪寒に振り向いたときには、遅かった。
「……トゥー・イゥー・トン・クロノン・パライルーサン……」
水を使った幻術を囮とした、時間稼ぎ。
振るった拳は、僅かに届かず。
いつの間にか背後に立っていた白皙の少年が、その詠唱を完了していた。
「―――石の息吹(プノエー・ペトラス)」
力持つ言霊が、世界の法則を書き換える。
無限に色を変える世界の可能性の中から少年の呪文が構成したのは、荒涼の大地。
土埃にも似た煙が一瞬にして辺りを満たし、その棚引く手に触れたものを変化させていく。
「く……ああっ……!」
呻きを漏らしたのは神威だった。
少年の召喚した魔の煙が、神威の腕を包みこんでいる。
変化は一瞬。
黒い学生服の袖が、下に着込んだシャツが、日に焼けない白い肌が、暴力の匂いを感じさせない細腕が、
それを構成する神経が、筋肉が、骨格が、司狼神威の左腕を構成する要素のすべてが、書き換えられていく。
刹那にも満たぬ時間の後。
神威の肩口から伸びる、その二の腕から先にあったのは、肘や、手や、指ではない。
そこに存在していたのは、肘や、手や、指や、およそ人間の腕というものを模倣した、石の像であった。
「片腕だけ……か。おかしいな、完全に石化するつもりだったんだけど……」
呟く少年の眼前、神威が己の左腕であったものを押さえ、秀麗な顔立ちを苦痛に歪めている。
「てめぇ……何、を……!」
「やはり魔術の発動自体に極端な制約があるようだね」
睨みつける神威の視線を、少年は意に介さない。
「もう少し色々と実験しておきたいところではあるけど……まあ、僕にも都合というものがあってね。
そう時間をとるわけにはいかないんだ」
言いながら、傍らに置かれていたデイバックの中に手を入れる。
「魔術の発動は不安定。そしておそらく、君の使う術式の体系にも当然、物理障壁に酷似した力はあるだろう。
それを素手で破っていくのは骨が折れるし、何より時間がかかる。
なら……こんなのは、どうかな」
言葉と共に少年がバックから引き出した物体に、
「―――ッ!?」
神威が瞠目する。
デイバックから引きずり出されたのは、優美な刀身を持つ一振りの長剣である。
刃渡りにして一メートルを超える、柄を含めれば百三十センチほどにもなろうかという大剣。
翼を模した握りには精緻な装飾が施され、柄頭を飾る玉には六芒の星が刻まれている。
全長に比して恐ろしく細く、また薄く仕上げられた刀身にも無数の呪術的な文字が刻まれた美しさは、
それ自体が一個の芸術品と表現しても決して過言ではない。
そんな大剣を重さを感じさせずに持っているのは、いかにも子供じみた体格の少年である。
己が背丈よりも僅かに短い程度の大剣を軽々と持つその姿は一種独特の異様を漂わせていた。
だが、神威が真に驚愕していたのはそのような些事ではない。
「てめぇ……、それ……は……!」
それは、神威にとっての悪夢。
死と鮮血、炎と破壊に彩られた神威の記憶の、その最悪を体現した、刃である。
『神剣』。
刀隠の社で、女の胎を食い破って生まれ出でる、地球最後の戦いの象徴。
神威の世界に存在していた大切なもの、そのすべてを狂わせ、死に至らしめた、災厄の刃。
想いを超え、決意を秘め、覚悟を孕んで封印したはずの、星の終わりを告げる鐘。
それが、目の前にあった。
「どっち、だ……!」
「……?」
「それは、俺と封真……どっちの、『神剣』だ……!?」
『神威』は一対、二人。
神の威を代る者―――司狼神威。
そしてその添え星、神の威を狩る者―――もう一人の『神威』、桃生封真。
二人の神威の手になるべく生み出された『神剣』もまた一対、二振りが存在していた。
「……さあ。これは僕に支給されたマジックアイテムらしいけど、詳しいことは知らないよ。
だけど……うん、目の色が変わったね。これは君にとって、よほど大事なものらしい」
何かを反芻するように頷いた白髪の少年が、楽しげに笑う。
「てめぇ……それを、返せ……! 返しやがれ……!」
ゆらりと立ち上がった神威の表情から、苦痛の色は消えていた。
その中世的な顔立ちを満たしているのは、ただ憤怒の一色である。
睨んだ物を炎上させるが如き熱を帯びた視線が、少年を捉える。
「ふぅん……」
少年の涼しげな顔が、神威の怒りを加速させる。
「てめぇ……っ!」
怒りに任せて放たれた念動の力を、少年が小さく跳ねて回避する。
その背後で大木が一本、砕けて折れた。
「……忠告しておくけど、あまり力を無駄遣いしないほうが身のためだと思うよ」
「うるせえっ!」
神威の手から放たれた『力』の渦が、少年を捕らえることなく逸れて辺りを破壊していく。
その様子を目にして、少年がつかの間、思案げな表情を浮かべる。
僅かな間だけ目を閉じ、瞼を開いた瞬間には一つの結論を導き出したようだった。
「……うん、決めた。
面倒になりそうなら殺しておこうかと思ったけど……君との『縁』も何かの意味を持つのかもしれない。
だから君は、君の道を塞ぐすべてを打ち砕いて―――」
一つ頷いた少年の言葉が、唐突に小さくなっていく。
同時、夜空に跳ねたその姿もまた闇に溶けるように、消えていく。
「―――どこまでも僕を、追ってくるといい」
「な……っ! 逃がすかっ!」
狙いを定めず放った念動の渦は、ただ夜の闇を切り裂くのみ。
「……今、僕はネギ・スプリングフィールドという少年を捜している。
そうだね、君もまた彼を追っていれば、僕に会えるかもしれない。
もう一度会えるその時を―――楽しみにしているよ」
声が、消える。
少年が、消えていく。
「待て……! 待てよ、てめぇ……!」
いかに叫んでも、めくら滅法に『力』を振り撒いても、時間が巻き戻ることはない。
どれほど待とうと、それきり少年が姿を現すことはなかった。
「――――――ッ!」
神威の絶叫が、夜空に吸い込まれていく。
何もかも、何もかもが神威を呪い、嘲り、蝕んでいくように感じられていた。
誰もいない。
この島には、神威の守りたい人たちは誰もいない。
だというのに、死と鮮血の記憶だけが追い縋って絡み付いてくる。
強くなりなさい、と母は言った。
誰もいない世界で隻腕の司狼神威を包むのは今、ただ闇ばかりである。
【D-5 肉壁周辺/一日目深夜】
【名前】司狼神威@X
【状態】左腕石化、疲労大(『力』の使いすぎ)
【持ち物】ディパック(基本支給品一式、不明支給品1〜3)
【思考】0:優勝し、元の『東京』へ帰る。
1:『神剣』を奪還するため、白髪の少年(フェイト)を追う。
2:少年の言葉にあったネギを捜す。
※10巻終了後からの参戦です。
【名前】フェイト・アーウェルンクス@魔法先生ネギま!
【状態】疲労小(魔術による消耗)
【装備】『神剣』@X(どちらの神剣かは後続にお任せ)
【持ち物】ディパック(基本支給品一式・水残量0、不明支給品0〜2)
【思考】0:不明。
1:ネギを捜す。
※参戦時期は後続にお任せします。
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