鬼畜冒険者出発
森の中をひょうひょうと歩く若い青年がいた。
右手には日本刀をぶんぶんと振り回しながら。
「どうっすかなぁ……」
気がついたら訳の解らないまま、いきなりゲームに参加しろと言われた。
危うく、ジルに変な空間に閉じ込められる所だったので助かったと言えば助かったなのだが。
裸だったのが、服だけは何故か着せられていたのは情けによるものだろうか。
「素直にゲームに乗るのは癪だ。このスーパー超絶美形ランス様があんな下品なリスに従うなんてゴメンだ」
しかし
「あいつらも魔人かよ……クソ、やっとこさ倒したノスの奴よりも強そうだぞ」
地竜の魔人ノス。
前々魔王ジル復活のためにサテラとアイゼルをだまくらかしてヘルマン第三軍であるパットンに組し、リーザス城を陥落させた魔人である。
バレス、マリア、リック、レイラさん、ミリ、ミルとリーザス兵計18名が総出でかかってもノスは蹴散らした。
カオスの効果で攻撃が通じるようになっていての状態でだ。
流石、闘えば闘うほど進化する魔人。
その後をすかさず、ランス、シィル、志津香、かなみ、マリス、リアの総出でかかってやっと倒した。
「あいつは殴ってる内にどんどん堅くなっていったからなぁ……」
思い出すだけでも嫌気がさす。
ダメージを与えれば与えるほどノスは強くなった。
最後の方など、殆どギリギリで倒したようなものだ。
そのノスより強いケイブリス。
それに従う二人の魔人。
構成は先のノス、サテラ、アイゼルの三人と全く同じ数。
いや、ノスよりも強く感じれる魔人ケイブリス一人の存在だけでもより厄介なヤツラだ。
「魔人三匹と魔王を倒したと思ったら、また魔人三匹。今度はバックに神とくら……」
そういえば、光の神のプレートをゲシゲシと踏んだのを思い出す。
思い当たる行動に罰が当たったのかとランスは考えた。
「当面どうするかだな……」
まずは知り合いと合流。んで生き残る。
そして首輪外して魔人どもをぶちのめす。
光の神は……まぁ、何とかなるだろう。
「うーん……何かがしっくりこねぇんだよなぁ」
先程の会場でシィルがランスにワンワンと泣きすがってきた。
シィルは突然の出来事と魔人という恐怖で気づかなかったのかもしれないが、ランスはシィルにどことなく違和感を抱いていた。
「シィルに間違いはねぇんだ……でも俺様のシィルとは何かが違うんだ。
さっきまで一緒にいたシィルより大人の色気みたいなのがあって……」
それがランスがどうしてもシィルを直ぐさま探す気になれなかった理由である。
似て否なるもの。に感じられて仕方がないのだ。
あれがシィルなのは間違いない。とランスの本能が告げる。
だけども――俺様のシィル――とは違うとも告げているのだ。
最もシィルを知っているからこそ、シィルからの違和感にだけは反応したのだ。
でも、やっぱりシィルが死ぬのは見たくなかった。
それに大人っぽいシィルとうはうはしてみたいという欲望も少なからずあった。
俺様のシィルと何か違うという感覚から、少しだけ拒絶感もあったが……。
「まずあのシィルを探すか……その後はマリアと志津香だな」
機械弄りの好きなマリアなら、この忌々しい首輪を外せるかもしれない。
それに俺様の女を危ない目に遭わせるわけにはいかない。
「そういえばカワイコちゃんいっぱいいたな……」
(怯えるカワイコちゃん、襲われるカワイコちゃん。
そこへ颯爽と現われて救う俺様。それを見た女の子は俺様にドキドキ。
エスコートして首輪外して魔人どもを倒せば、もう俺様にメロメロ。
そしてお礼に……うん、グッドだ)
「ガハハハハハハハハ」
飛躍した想像を頭に浮かべ、アヘアヘと下品な妄想にひたる。
優勝するという事は女の子を手にかけなければいけない。
そんなのはランスの信義に反する。
「おぉっとっと……こんなことしてる間にもカワイコちゃん達がこのランス様の助けを待っているのだ」
とそこで見たくもない野郎どもの集団も思い出す。
中にはあのパットンとトーマとミネバという最悪三人衆の存在もあった。
(あの筋肉達磨どもになんか会いたくもないぞ……)
というか彼らなら、自分を見た瞬間襲ってくる、と考える。
(あーでも他の野郎はどうすっかなぁ……)
相手にするのはまた三人の魔人。
様々な知恵と人員でようやく倒した事を考えると、幾ら自意識の強いランスでも一人では無理なのが解る。
(うーん、敵意さえなければ俺様のために協力させてやってもいいか)
「まずはどこにいこうかなっと……」
配られた地図を広げて方位磁針で位置を確かめる。
その辺りはランスも手馴れた冒険者だ。
「北に高い山、地図から見てもありゃ有名な翔竜山だな。
ってことはここはゼス付近の森か」
「付近の街でも探索してみるか、街なら誰かいるだろ」
【一日目朝、ゼス付近翔竜山南の森】
【ランス: 状態:良好 アイテム:不知火】
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