猛将、裏切りに散る
「誰かと思えば将軍閣下じゃないか」
「おおミネバか」
唐突にかけられた声に振り向くのは、ヘルマンにその人ありと謳われる猛将トーマ
声をかけたのはこれもヘルマンの女将軍、ミネバだ。
まずは再会を喜び合う2人、
「ともかく腹ごしらえといこうじゃないか」
女性とは思えぬほどの隆々とした身体を揺らし、ミネバはバックから食料をトーマに手渡す。
さすがのトーマも味方に出会えて安心したのか、表情を緩め、ミネバから缶詰を受け取ったのだった。
「で、これからどうするつもりなのさ」
水を飲みながらトーマに話し掛けるミネバ
「まずは王子と合流するのが先だな、となるとやはり目指すは我が王都だろう」
缶詰の中身を頬張りながらトーマは応じる。
「へぇ…こんな状況でもあきらめちゃいないんだ」
「無論だ、いかなる場合でも軍人たるもの国家への忠誠を失ってはならぬ」
厳しい顔をさらに険しくするトーマ。
「そしてその後、王子を中心として人材を募り反撃の機会を待つ…むざむざ魔人どもの奸計に乗るわけにはいかん
もっとも乗る奴がいるとも思えんが」
トーマの言葉に笑うミネバ、その笑い方があまりにも豪快なので、つられてトーマもつい笑い出してしまう。
「ははははは」
「ははははは何言ってるのさ、今ここにいるじゃないかさぁ」
その声に笑い声が一瞬で消える。
「何!?」
言うが早いか、ミネバの拳がトーマの胸板を狙う、間一髪で避けたトーマだが。
「ぐっ…」
強烈な痛みが胸を貫き、こみ上げる物に口元を押さえる、口元を押さえた手のすきまから鮮血が溢れ出す。
毒を盛られたのだ。
「気でも…違ったか…ミネバ」
致死量の数倍の薬物を盛られているにも関わらず、トーマは震えながら立ち上がろうとする。
「あたしは正気さぁ…こんなチャンス見逃すわけないだろ」
その様子をにやにやと眺めるミネバ。
「それにあんたは前から気にいらなかったんだよ」
全身の激痛に耐えながらなんとか立ち上がったトーマ、しかしそれが限界だった。
何の苦もなくミネバはトーマの背後に回りこみ、その背後から首をギリギリと締め上げる。
「何故、魔人どもの話に乗った…」
「決まってるだろ、望みを叶えるためさ…」
あいかわらずにやついた声のミネバ。
「愚かな…魂を売ってまで得る栄光に何の意味が…」
トーマのその一言はミネバの感に触ったらしい、彼女の表情が一変する。
「うるさいんだよ…もういいさっさと死にな!王子もすぐに傍に送ってやるから地獄で忠犬やってな!」
ミネバが腕にほんの少しだけ力を込めると、それだけでトーマの首の骨はへし折れてしまったのだった。
トーマの死体を投げ捨て、先へと進むミネバ、目指すはやはり王都ラング・バウ。
「あたしは王に、ヘルマンの王になるんだ」
もはや欲望を隠そうともせず、ミネバはぎらついた目で呟くのだった。
【一日目朝、死の大地付近】
【ミネバ: 状態:良好 アイテム:不明】
(本来の支給品である毒入り缶詰は使い切りました)
【トーマ:死亡】(残り46人)
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