診察所・メシ
盆を下ろしながら、荒木は「オマチドーサマ」と何故か片言で言った。
尾田はちょっと笑った。
「アメリカ人みたいですね」
「残念だがアメリカ人じゃない。イタリア人だ」
荒木は盆ごと、机の上、岸本の原稿の傍らに皿を置いた。
岸本はそれを覗き込み、「サラダですか?」と訊いた。
「はい、そーデス」荒木が答えた。
はい、そーデス。何となく、本物の外国人が発音する日本語だ、と尾田は思った。
「ありがとうございます」
岸本が言って、添えられたフォークを取り上げた。皿を持って、ひとくち、口に運んだ。
「う…うっまァーーーイッ!!」声を上げた。「トマトがチーズをッ! チーズがトマトを互いに引き立てるッ!!」
尾田はそれで、荒木の顔を見た。
「モッツァレラチーズとトマトのサラダでございます」
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