なみえvs画太郎
とにかく―――勝った。何にせよ、とにかく。
なみえ「・・・勝った。」
その時、唐突に背後から声がかかった。
漫☆画太郎「・・・なみえた〜ん♪ハァハァ」
「大丈夫?」
「まぁね」
画太郎は木多の死体をまじまじと見つめた。自分の漫画で見たような汚い顔がそこにある。
「そんなものだけでやっつけたの?すごいわ、同じ下ネタ漫画家として、尊敬しちゃう」
「まあね」
「ねえ前から思ってたの、あなただけはあたしの漫画を無理に誉めない人だって」
なみえは面白くもない漫画を誉めるなんてごめんだったし、画太郎に声をかける時も
他の子のようにひきつり笑いなどしなかった。この狭い業界でその態度を窘められても
それだけは譲れなかった。
「あたし、ちょっと悔しかったの。
あなた、10週打ち切りコースだったのに、本誌読み切りとか、皆にもてはやされて。」
なみえは黙って聞いていた。何かおかしかった。すぐに気づいた、なんで、なんで
画太郎は、本誌連載歴が自分より長いのに、人気がないのだろうと。
「あなたみたいな漫画家、あたし、とても好きよ。パインも10冊くらい買い占めちゃったわ。
ふふ。だからとても―――」
なみえは目を見開いた。ばっと体を翻すと、走り出していた。
「だからとても―――」
画太郎は雲形定規をすいと5枚ほど指に挟めて持ち上げた。
それを元気良く手裏剣を投げるように投げた。
二〇メートルばかり向こうまで離れ、なおぐんぐん遠ざかりつつあったなみえの
背中に正確に5枚の雲形定規がささり、なみえはヘッドスライディングするように
前のめりに飛んだ。
画太郎がデイパックに入った支給武器『雲形定規お徳20枚セット』の袋を取り出し、言った。
「とても残念」
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