藤崎&しまぶ・2






「俺はほかにも見たぜ、二人ほど」
島袋が目を大きくして、「そうなの?」と言った。
藤崎は頷いた。
「夜の間に、ちょっといろいろ動き回ったんだ。それで――一人は男だったな。
ほら、ちょっと思いつかないような、大根立ててセットした股間でさ――岡野だったと思う」
「声――かけなかったの?」
藤崎は肩をすくめた。
「ちょっとな。自分で書いておいてなんだが、俺はやっぱり、ギャグ漫画家ってのは怖いよ」
「――僕もそうなんだけど」
島袋の言葉に藤崎はしばらく沈黙し、そしてゆっくりと言った。
「いや、でも、お前はたまにシリアスも描くだろ?」
失敗してるけどな――そう言いかけて慌てて口を閉じた。幸い、島袋は気づいていないようだ。
「それに、もう一人。あの荒木飛呂彦をな、見た」
「荒木――先生かあ。あの人の漫画、ちょっと怪しいもんね。だから――」
「ああ、だから俺は仲間になるのは遠慮しといたんだ。しかし――」
藤崎はちょっと視線を空の方へあげた。
「向こうも俺に気づいたようだった。すぐに畑の畦に身を伏せたがな。背後霊みたいなのを操っていたように見えた。
――やつはしばらく俺の方を見ていたと思う、しかし、突然姿を消したよ」



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