ホーム&アウェイ
S・A成績五位であり、理事長の息子である狩野宙。
彼は樹海を歩いている。
木々を掻き分け、ひたすらに前へと進む。
「明は急いで見つけないと。あと純と芽もやばいか。竜と彗と光なら問題ないだろうけど」
宙は思わず思った事を口に出す。
彼が名簿を開いて感じた事。
それはS・Aの7人が全員参加していることだ。
そして運動能力に劣る三者は外敵に襲われた際の自衛手段をあまり持っていないことも承知済である。
特に精神的にも脆いところがある明は宙にとって、一刻も早く保護しなくてはいけない対象だった。
「あいつのことだから、間違いなく森や山にはいないだろうし、街中にいるよな」
宙は樹海を突っ切り、市街地へと急いだ。
そして、出会う。
一人の金髪の男に。
########
時は僅かにさかのぼる。
ピノッキオは樹海の木にもたれながら、支給品のチェックを行う。
支給された物は板前包丁が一本に学校の制服が一着。
ピノッキオは包丁を手に取り、歩きだす。
「死んだと思ってたけど、気のせい?いや、僕は確かに死んでた。蘇生なのだろうか。それならあの仮面の男の発言には嘘は
無い事になるけど。だけど、実際にワープは実現していたみたいだし、それが出来てもおかしくはないか」
自身の身に起こった事を冷静に分析しつつ、ピノッキオは方針を纏める。
「優勝かな。おじさんの所に早く帰らないと。無駄な事を考える事もない」
そう思考を纏めたのと、ピノッキオの視界に一人の男が映ったのはほぼ同時だった。
「東洋人か」
それだけを確認すると全速力で走り出す。
制服姿の男の元へと。
########
「あっ、よおっ、俺宙ってんだ。お前はっ!?」
宙は走りよってくる男、ピノッキオに向かい手を振り挨拶をする。
しかしピノッキオは一切速度を緩めることなく、接近してくる。
包丁を構えて。
「!おいおいマジかよ。何考えてんの?」
ピノッキオは包丁を宙の胸へと突き出してくる。
それを寸でのところで後ろに跳んで避ける。
一瞬の反応の遅れが生死を別ける。
その世界に居る事を宙は改めて思い知らされた。
「ちょっと待てよ。なあ。お前マジで殺し合い乗ってんの。やる気?」
「そうだ。僕は急いで帰らなくてはいけないからね。君は最初だ」
ピノッキオはそれだけ言うと宙を襲い来る。
宙はそれを距離をとりながら避ける。
しかし、ピノッキオはそのような単純な回避を許しはしない。
「はあっ」
「なっ?」
ピノッキオは飛び掛るように一気に間合いを詰めて刃を宙に向ける。
だが、それを体を咄嗟に捻るようにしてかわす。
刃は宙の右肩を僅かに掠めるだけだ。
「つっ。いてー。おいおいマジで斬れてんよ。やめねーか。マジでさ」
「ふっ!」
だがピノッキオは当然わびるわけもなく、追撃を行う。
それには宙も流石に怒りがたまる。
「いい加減にしろよな」
「……はあっ」
ピノッキオが包丁で必殺の突きを繰り出す。
だが、そこでアクシデントが起こる。
ここは樹海。つまり下はぬかるみがあり、市街地のようにはいかない。
ピノッキオは主にイタリアを拠点に活動をする殺し屋であり、気候と町並みを考えても、ぬかるみなどほとんど経験していない。
対する宙はアマゾンなどで何度も冒険を行う、放浪癖がある男である。
従って、樹海のぬかるみなど宙にとっては平地と同義である。
その差。つまりピノッキオはぬかるみに足を取られ大きくバランスを崩す。
「ぐっ」
「はあっ!」
その一瞬の致命的隙を見逃さず、宙はピノッキオの右手を蹴り上げる。
包丁は跳ね上げられ、そのまま地面へと突き刺さる。
「ちっ」
「まだだあっ!」
そのまま更に宙は右拳をピノッキオの顔面へと叩き込む。
一度バランスを崩した事で体勢を整えるのに手間取るピノッキオは回避できるわけも無く、直撃を受ける。
「くっ」
「はあはあ。分かったかよ。そんなんで殺しなんて」
「ちいっ」
ピノッキオは決して負けはしない。
この状況では勝機は薄い。
そう感じ取ったピノッキオは地面を掴み、泥を宙へと投げる。
「くっ」
その不意討ちに思わず顔をガードする宙。
その直後、ピノッキオは一気にその場を離脱すべく駆け出した。
はるか遠くへと。その場を離れる為に。
そしてその場には宙が残された。
「あの野郎………」
宙は地面に刺さったままの包丁を手に取りながら一人呟いた。
########
「くそっ、油断した」
ピノッキオは苦渋に満ちた表情を浮かべていた。
油断による事実上の敗北。
顔面へと拳の直撃。
相手が何か武器を握っていれば死んでいてもおかしくはなかった。
「次は負けない。絶対に!!」
一流の殺し屋ピノッキオ。
敗北を知った今のピノッキオに死角はない!
【D-1 樹海/ 1日目 深夜】
【狩野宙@S・A スペシャルエー】
[状態]:右肩にかすり傷
[装備]:板前包丁@スキップ・ビート!
[道具]:支給品一式 未確認支給品1〜3
[思考]
1:SAの仲間を探す。
2:特に殺し合いに乗る気は無い
3:金髪の男(ピノッキオ)を警戒
【D-2 樹海/ 1日目 深夜】
【ピノッキオ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:顔に軽い打撲
[装備]:無し
[道具]:支給品一式 桜蘭高校男子制服@桜蘭高校ホスト部
[思考]
1:皆殺しで優勝する
2:まずは武器を調達する(出来ればナイフ)
[備考]
死後からの参戦です。
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