一方通行の指針 Act_To_Choose.
B-7、森林地帯。彼のスタート地点はそこだった。
「…、あァ?」
疑問の声を上げた彼の名は『一方通行(アクセラレータ)』。
かつて学園都市最強とよばれた超能力者。
今は絶大な力の半分以上を失い、能力も自分だけでは使えない。
他にも複雑な事情を数多く抱えた、白い少年。
「…何処だここァよォ」
誰に言うでもなく呟く。当然返事は無い。
辺りを少し見回した後、彼は歩き出す。
歩きながらザックの中身を確認する。
飲食料、灯り、地図磁針、筆記類、時計、名簿。
他に何か入っていないか見ようとして、
「…何だよ」
彼はようやく気が付いた。
「俺はフツーに喋れてるじゃねェか、オイ」
首輪に囲まれる様に円を描くチョーカーに。
チョーカー。
かつて頭蓋骨破損という重傷を負った彼は、言語・計算分野に障害を負った。
それを補う為、彼の脳を他人の脳とリンクさせ、言語・計算等を代理演算させる。
その際、脳波変換機の役割を果たすのがこの電極チョーカー。
主催者の説明から考えれば力を使う『武器』として没収されてもおかしくない代物ではある。
しかし、これが無くては彼は戦う所か、他人と話す事すらままならない。
更に演算元が何処かは分らないという事実があるのだが、とにかく彼にとってはありがたい事だ。
(成程ねェ。力は与えてやるから殺し合えって事か)
殺し合うだけの力が、今の自分にあるかはやや疑問だが。
それはさておき。
彼には二つの選択肢があった。
単純二択、ゲームに乗るか乗らないか。
前者は選ぶだけ馬鹿げている。既に一万人強の殺戮を犯した自分が、これ以上殺すのか。
かといって後者もどうか。それはチョーカーが原因だ。試作品故バッテリーが短い。
フル戦闘で使えば15分も保たないようなモノで、どこまで戦えるというのか。
「…、チッ」
とりあえず考えるのは後回しにして、彼は目に留まった名簿を開いた。
見知った名前は、二つ。
どちらも関係は『敵』と形容できる。
その一方でこんなゲームに乗る人間ではない。
わざわざ『実験』を止めに突っ込んで来た位だ。
「許せない」そう思い、確実に脱出を考えるはずだ。
では、既に虐殺者である自分に何ができるか?
少なくともこのふざけたゲームを止める位は出来るだろう。
腐っても『最強』だ。それに、やりようは幾らでもある。
例えば、あの雷使いに接触できれば、バッテリーの問題はクリアできる。
そうすれば十二分に協力はできる。こんな自分にも。
「…面白いじゃねェか。愉快に素敵にビビらせてやるよ」
一方通行は、まだどちらも選んではいない。
どちらかを選ぶ為に、彼は行動を開始した。
自分の為、そして、
『あーっ! あなたに眠気は鬼門なのかもってミサカはミサカは
目覚ましミサカにモードチェンジしてみたり!
ほらほら朝だよあと二時間でお昼だよってミサカはミサカは
足をバタバタ振り回して駄々っ子っぽく眠気に負けつつある意識に
覚醒を促してみる!!』
「…くっだらねェ」
一方通行は頭から何かを振り払った。
そして行動を開始した。
【B-7南部/森】
【一方通行】
[状態]:平常/反射(紫外線等。攻撃は対象外)
[装備]:チョーカー(フル戦闘:消費ほぼ0分)
[道具]:ヘルメット(デュラララ!!)
[思考]:バッテリー切れの前に御坂美琴の発見。
※電極チョーカーについて
チョーカーは常時バッテリーを消費します。
フル戦闘モードでは15分が限界で、平常時はその1/288のペースで消費。
つまり最長でも三日が限界です。
バッテリー切れ以後は言語・計算の演算が出来なくなる為
まともに喋れず、四則演算も不能となります。
ただし、何らかの手段で充電した場合は代理演算復活、平常に戻ります。
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