バトロワでオフ会を開いた大物youtuber
「ウィイイイイイイイイイイス!!
どーもー、シャムでーす!!」
車の中、不相応に巨大なサングラスを掛けた男は独特な挨拶をする。
「ま今日は、バトルロワイアルに巻き込まれたんですけども!
えーっとですねぇ、まぁ集合場所の、えー……
イオンシネマ、にいってきたんですけども。
只今の時刻は、一時をまわりました。
はいちょっと、遅れていったんですけどもね。
えーバトルロワイアル開始から、少しした後に、えー……イオンシネマにいったんですけども。
ほんでー、まぁイオンシネマ全体の動画を撮った後にいったんですけども。
……ほんでー、かれこれ、まぁ1時間くらい、え〜待ったんですけども」
男は一呼吸置いて、そしてため息混じりに言葉を続けた。
「……参加者は、誰一人、来ませんでした……」
男の名はsyamu_gameと言う。彼もまた、動画投稿に精を出すyoutuberだ。
彼は待ち合わせをしていた。
殺し合いに巻き込まれた直後の、あのGOがバトロワ説明をしていた空間。
そこに居たHIKAKINとimigaに、あらかじめイオンシネマで待ち合わせる約束を持ちかけていたのだ。
なんと言っても自分たちはyoutube業界の有名人同士。お互いに尊敬し合える、信用出来る関係だ。
「誰一人来ることはなかったです! 残念ながら……はい」
魂の抜けたような表情、遠い目をしている事がサングラス越しにも察せられた。
「なんだろ? なんでこなかったんでしょうかねぇ?
もう一時間くらい待とうと思ったんですけども。
今日はね、えー……まぁ、みんなとバトロワ打破するつもりだったし。
あ、護身武器も、みんなと協力して分け合うつもりだったんで。
私の支給品は車一台でございます。支給品は車一台ッ!!
なのでもう、もう一時間待とうと思ったけど、流石にちょっと丸腰なんで。
今回のバトロワは……残念ながら! こういう、悲しい結果で……終わりですね」
ネタを優先しすぎて、意味がわからない人も居ると思うので解説する。
彼の支給品は車一台だけで、武器が無い。
ゆえに、あまり長時間イオンシネマで待機して、もしも危険人物に出会ったらマズイと思ったのだ。
そのため一時間が経った時点で、仕方なくペットモール隣の駐車場に停めた車へと戻ってきたのだった。
「いったい何がダメだったんでしょうかねぇ〜。
何故来なかったんでしょうかねぇ、不思議ですねぇ〜……」
必死に理由を考え、ちょっと場所がわかりづらかったかもしれないなと結論づけた。
HIKAKINは既に殺され、imigaは調教を受けてるのだが、そういったネガティブな可能性には何故か触れなかった。
「もしかすると二人共、中で迷ってるかもしれないので。
えーもう一度、中を見てこようかなぁと思います。というわけで、次の動画でお会いしましょう〜」
純粋なのか、現実逃避なのか。syamuは二人のyoutuberたちを探しにモール内へと向かう事にした。
手を振りながら、彼はドライブレコーダーの電源を落とす。それが彼の最後の放送となるのかは、まだわからない。
【ペットモール付近/駐車場内/一日目/深夜】
【syamu_game@youtuber】
[状態]誰も来なくてヘコんでる
[所持]基本支給品一式、黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢シリーズ(ドライブレコーダー付属)
[思考]対主催
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