オープニング






「さあ、一番を決めようじゃないか」

気がついたら知らない空間にいた。
それがここにいる全員が味わった現象だった。

「君達は自分の声が、まさか自分だけのものだなんて思っているんじゃないだろうね?いや、確かに君達の常識ならそうなんだろう。でも違う。本当は君と同じ声なんていくらでもいるんだから」
異様な空間で話すのは一人の男。見た目は40過ぎにも見えるが、女のように声が高く、若者のような話し方をする男だ。
「そんなたくさんいる声の中から選ばれたんだから、君達はきっとその声に相応しいと思われるような人間なんだろうね。いや、失礼。もしかしたら人間でないのもいるかもしれないね」
何者かも名乗らず、一方的にこちらに話し続ける『彼』。しかし、不思議と口を挟む気にはなれなかった。
「ならば、選ばれた声の中で一番優れているのは誰か。私が知りたいのはこの一点につきる。だから―」

「君達にはこれから、殺し合いをしてもらおうと思う」

「ルールは簡単、最後の一人になるまで殺しあえばいい。たけしの映画を見たことがある人がいるなら分かりやすいかな。とにかくだ、最後に残った一人だけが、元の場所に帰れると思いたまえ」
突然の宣告に何人かが声を立てようとする。が、何故か声が出なかった。
「ちなみに、逃げようとしても無駄だよ?君達には首輪を付けさせてもらうからね。逃げようとするならボン!さ」
『彼』がそう言った瞬間、その場の全員に金属質の首輪が装着された。突然の不可思議に、誰かが声を出そうとするが、やはり声が出ない。
「6時間ごとに放送で死者の発表をしてあげよう。効果があるかは個人次第だと思うけどね。それと、殺し合いには期限を設けることにする。そうだな…72時間たっても二人以上残っていたら全員の首輪を爆破しよう」
反論も、意見も、行うことが出来ない。言葉も出ず身体も動かせず、ただ意識だけが『彼』へと集中する。
「最後に、私のことが気になっている人がいるようなので、私のことを教えよう。本来ならば私は定義すべき存在ではないのだが、あえて言うならば…」

「『視聴者』。そう呼んでほしい」

急激に意識が遠のいていく。全てが始まり、終わるのだと誰かが実感した。
「これより、バトルロワイアルを開始する」
『視聴者』がそう言った直後、全員の意識が喪失した。

【バトルロワイアル・開幕】
【残り80人】
【主催者・『視聴者』】



前話   目次   次話