オリ主はワイアルド!…そしてデッドプール







「なんてこった……」

猿顔の男が呟いた。
日焼けした体にムキムキの筋肉。そして首には首輪。
男の名はワイアルド。ミッドランド王国にて剣を振るう黒犬騎士団の団長。

……に憑依した元日本人。シケモ中学生。

時はさかのぼり数年前。
元日本人こと田中太郎は、自室にてこもり自身の愛してやまない傑作漫画『ベルセルク』を愛読している最中に、なんと作中キャラである外道団長ことワイアルドさんに憑依したのだ。
つまり原作キャラ憑依原作知識ありのオリ主である。

「なんてこった……」

つい先ほどまではワイアルドは村の自宅にいたはず。
だがまあ突如知らない場所に来たことは二回目なのであまり気にならない。
なによりも気になるのは……

「まさか憑依トリップの次は"パロロワ"かよ!ジャンル違うだろぉぉぉッ!」

頭を抱えながら悶え叫ぶワイアルド。
ワイアルドには覚えがあった。かつて懐かしの日本にいた頃の、ネットに没頭した日々の中にある記憶に。
首輪、見せしめ、主催、殺し合い、そして見せしめ。
はいどうみてもパロロワですね本当にごめんなさい
世間一般で言えばヒッキーヲタだった田中太郎。
こと読み漁った二次創作やSSの知識に関しては馬鹿にできない。
その中の一つ、パロディ・バトルロワイアルにこの状況は酷使している。
ていうか、懐かしきスマホに感動しながら操作して名簿を見てみる当たり、どうも見覚えのある名前ばかり。

(我妻由乃とか雪輝とか……たしか『未来日記』だったっけか?
 セイバーとかはどう考えても『Fate/Zero』 だろ。龍之介って書いてるし。
 他にもハルヒやら青鬼やらあからさますぎる名前がチラホラ……ってバーボとジルたんの名前まであるしッ!)

スマホ片手に百面相するワイアルド。猿顔にそれは不気味である。
日本で確かに見かけた、つーか読んでいたり見ていたりと、参加者のことをかなりワイアルドは知っていた。
まあキャラとして知っているだけで、直接生身で会ったわけではないのだが。

「ひひひひひひひ、よっしゃ、ここは一つ……」

ひとまず落ち着いたワイアルド。
小悪党のような笑みを浮かべ、気持ちの悪い笑い声を上げる。

「このワイアルド!マーダーとしてフィーバーして……
 ってそんなわけあるかーい!」

ノリで行うツッコミ。略してノリツッコミ。
元日本人ワイアルド名物一人ギャグ。
悪戯っ子のように舌を出し、「(∀`*ゞ)テヘッ」ってしてる様はとても腹が立つ。

「冷静に考えたらジルたんとバーボ居るじゃん。やば、つーか人殺しダメでしょ。
 人類皆兄弟!……俺人(ひと)じゃなくて使徒(しと)だけどね」

ワイアルドは少し、いやかなりその意識は錯乱している。
作者ならぬ神の言葉を借りるなら、ワイアルドボディに宿る魔に侵食されて……うんたらかんたら。
だがそこは我らがワイアルド。ヲタ宣誓に従ってかれは日本人としての常識を一応保ってる。
一応である。
本当に一応である。
大切な事だから四度言う。本当に一応、常識人なのである。
例え悪霊にとりつかれた人間やらを全く蝶々せずバラバラにしたり、部下達を拷問染みた厳しすぎる訓練、ていうかほぼ拷問を施してしまっていても、一端の常識はあると思っているのである。

「やっぱマジでヤるとしたら対主催っしょ!」

そんな彼は対主催のスタンスをとることにした。

(マーダーやらになってみるのも一瞬悪くないと思ったお茶目な俺、だが、冷静に考えたら殺人ダメ絶対。
 それにマーダーには生還ENDとかマジで無さそうなんで、遠慮しときマッスル)


「まぁせっかく来ちゃったんだから、拙者心底楽しまなきゃ損じゃないかなと拙者思うんで候」

なぜか侍口調。一転して真面目になったワイアルドが見るのは会場の地図。
田中太郎がトリップしたベルセルクの世界観は、俗に貴族やら王族やら騎士やらの出まくる中世世界。
ネットやら日本の誇るアニメやら、娯楽なんてじぇんじぇんありましぇん(笑)
女遊び?彼女いる歴0年のワイアルドには難易度ルナティック。
そもそも童帝な彼にそんな度胸は無い。
一応自分でトランプやら、見様見真似で日本食(という名の毒薬)などを研究、発明していたワイアルド。
だがそれはどれも現代日本のものには遠く及ばなかった。
だが地図を見よ!この場にはなんと、近代的な建物がズラリッ!
十年単位で中世の世にいたワイアルドにとって、まさにここは楽園ことパラダイス
しかも、しかも!アニメやらラノベやらのキャラが、生身で跋扈しているというビックリの状況! 
あぁ、少年心にワイアルドがワクワクするのもわかる。


「うひょひょひょひょひょひょ!」


だが流石に犬のように興奮し、走り回る姿はキモい。

「よっしゃ!いざ征かんよワイアルドン!
 目指すは娯楽の園……」

勇ましくデイバックを担ぎ、歩を進めようとしたワイアルド。
だがそれは遮られた。
ダダダダダダダダッ!擬音で表すとこんな感じだろうか?
無数の弾丸が、ワイアルドの背中に直撃する。

「ありゃ?あんた中々にタフじゃん。まあ俺ちゃんほどじゃないと思うけど」


声の主は、全身タイツの覆面男。
手に持つ小型マシンガン、ベレッタM12。
それから上がる火薬煙を見るに、この男がワイアルドに発砲したのは間違いない。
だが、その声は人に向けて銃を打ったにしては酷く軽い。
しかし驚いたような響きはある。
覆面男の視線の先にはワイアルド。
銃弾の衝撃に耐えきり、ふざけた雰囲気は鳴りを潜めている。
睨み返すその顔には無視できない怒気。


「なりするでありやがりますかァァァァ!!」


ワイアルドにベレッタM12の弾丸は、あまり、ていうか全く効いていなかった。 
近代兵器で容易く破壊できるはずの肉体は、その筋肉に阻まれる。
ワイアルドは生贄を捧げて使徒に転生した人外。それに憑依した田中太郎だが、使徒としての頑強な肉体は憑依前とあまり変わっていない。
いや、以前よりも強化すらされている。
原作知識でいずれミッドランドが滅びることを知っていたワイアルド。
原作でのワイアルドの働きを粗方やり尽くし、団員たちと国外逃亡する際らの宴会。
毒キノコとアルコールのダブルパンチにより、発狂したワイアルドは、その上に名も無きモブ蛇使徒を蒲焼きにすることで捕食している。
一体の使徒でも、一般人では全く刃向かえない絶対の存在。
だが今のワイアルドは、捕食という行為により一人で二人分の魔を抱いている。
つまり脅威のバイプッシュ!
まあ要約するとマシンガン程度じゃワイアルド死にましぇん。

「ええ!マシンガンじゃ効かないかよ!そういうことはもちっと早く言って欲しいよお前ら」

覆面男は何やら何もない所に向かって喋る。
その人を舐めた態度に、更に人を舐めまくったワイアルドは……

「無視すんなァァァァァァッ! 行って前やろかァァァァァァーー」

キレた。盛大にキレた。
ワイアルドは変身こそせずとも、神速のスピードで覆面男に飛びかかっ……

「ーーアァァァあれ?あれれ?」

……らなかった。


憤怒の表情は鳴りを潜めている。 
かわりに、両目をこれでもかと大きく見開き、凄まじい眼力で覆面男を見やる。

「お、なになに、俺ちゃんの顔になにかついてる?」
「……お、お前は……。そのタイツ、そのマスク、そしていきなり人に銃を向けるそのふてぶてしい態度!
 ま、まさか!」
「え、もしかして俺ちゃんのこと知ってるの?」

何やらブツブツと呟き、視線に憧れのような物が混ざってきたワイアルド。
先ほど銃撃したばかりのワイアルドの変化に、覆面男は興味深そうに見やる。

「お前は、あのアメコミの……」
「お?お?来ちゃう来ちゃうの?俺ちゃんのファンきちゃうの?」
「スパイダーマ「違うわい!俺ちゃんはデッドプールだっつーの!」え、違うの?」

覆面男、もといデッドプールは大ボケをかましたワイアルドの声を遮り、思わずツッコミを入れる。
覆面の名はデッドプール。第四の壁破壊能力を持つ、不死の傭兵。

「ていうかやっと紹介してもらえたよ!。
 ずっと覆面やらタイツやらで済まされそうで怖かったよ!」
「は?」
「あ、こっちの話」

怪訝そうなワイアルド。素っ気なく返すデッドプール。
シュールだ。とてもシュールだぞワイアルド!

その後、なんやかんやありつつワイアルドとデッドプールは話し合いの席を設ける事になった。
普通ならいきなり射殺しようとしてきた相手と対話を求めるのは異常な事。
だが異常な事など、すでに存在自体が世界にとって異常なこの二人にはあまり関係がない。


◆◆◆◆◆◆


ーー30分後


「マジで!デップーさん生セイバーにあったの?すっげー!」
「あぁ、他にも金ぴかやら征服王やら色々あったんだよね。
 俺ちゃんあん時はなぜかバーサーカーのクラスになっちゃって大変だったのよ」
「バーサーカーねぇ……なんとなくキャスターのような気がするけど」
「あ、俺ちゃんは魔術とかはカラッキシだから、キャスターにゃ無理だね」
「へぇぇーー」

ワイアルドとデッドプールは、メタ的な会話で熱く盛り上がっていた。
実はこのデッドプール、我々の世界で言うSSの形で、ちょくちょくアニメやら色々な世界に出張している。
よって、ワイアルドと同じく多数の参加者の情報を知り得ていた。

「俺もさぁ、ミッドランドはどう考えてもヤバイって思ってたんすけど、
 原作知識の恩恵をなくすのもどうかなぁと思ったんですよねぇ。
 だから、ちょっと色々フィーバーして……」
「あぁ、ベルセルクはヤバすぎだよね!
 俺ちゃんはまだそこには言ったことないけど、死亡フラグ満載ってのはしってるよ
 キャスちゃんには会った?」
「えぇ、キャスカとかガッツとか、主要キャラにはよく会いますよ。
 もうすでに心の友ってレベルですよ(笑)」

対するワイアルド。元々は第四の壁の向こう側の立ち位置にいた元日本人。
理不尽な原作知識を活用し、死亡フラグ満載のベルセルク世界を生き抜いてきたオリ主度は伊達ではない
知り得てはならない世界に干渉し、知り得てはならない知識を得て、知り得てはならない秘密を知る。
ようするに二人は同類なのだ。

「デップーさん!」
「ん?なになに?」
「俺と同盟組みましょ!
 俺もアンタみたいにクロスオーバーしたい!
そして結婚してくれ!」
「何言っちゃってんのワイアルドちゃん!同盟は良いけど結婚は嫌だよ!
 俺ちゃんにそんな趣味はない」

かくしてこんな軽いノリで同盟が組まれたとしても、なにも奇妙に思う必要はない。



「ていうかなんで撃ってきたの?地味に痛かったんですけど?」
「いやなんか変質者だと思ったから」
「あんたに言われたくねえよ!」

【3―A森/一日目・深夜】


【ワイアルド@猿顔に憑依】
【状態】平常
【装備】特に無し
【道具】基本支給品、不明支給品3つ
【思考】基本:やっぱ対主催っしょ!
1:デッドプールと行動を共にする
2:生のキャラに会いたい。そしてできればサインとかほしい。
3:バーボ、特にジルたんと合流する
【備考】
※55話あたりから参戦。鎧とドラゴン砕きが没収されているため、変身してもそれらの恩恵は受けられません
※未来日記、Fate/Zero 、その他複数の作品のキャラ、及び設定を微妙に知っています

【デッドプール@デッドプール「俺ちゃんの登場するSSが最終回…だと…」】
[状態]:普通
[装備]:ベレッタM12
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:ワイアルドちゃんと行動を共にしようかなぁ
1:俺ちゃんはフリーダムだぁ!
【備考】
※どこらへんからの参戦かは未定で
※不死に制限あり



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