Who?






「失敗した、と言いましたか?」

たけしの助手、まのやすひこは訊き返した。

「あ〜、面倒くさいんでレベル下げて放り込んでおいたんだがな・・・」

眠そうに答えるとたけしは茶をすすった。
リンクの去った後、分校で休憩しているところである。
事件がない限り、ずっと休憩のようなものなのだが。

「一体、何が問題なんですか?」
「ある男なんだがなぁ・・・さらって来たらあまりに強くて驚いたの何の。
で、調べてみたら今の名前ってのは全てが終わってから付けられたらしいんだなぁ」
「全てが終わった?」
「大魔王を倒してからそう呼ばれるようになったんだと」
「その状態で連れて来たら強いですね、桁外れに」
「まぁ、強制的にレベル下げたから今は呪文は使えないし体力も標準並みのはずだが」
「なら、問題ないんじゃないですか?」
「身に着いた戦闘技術までは奪えないだろう?」
「あっ」

やすひこはようやく納得した。

「そういうことですか・・・十分、桁外れであると・・・」
「まぁ、他より有利な存在であることは確かなんだなぁ」
「で、それは誰なんですか?」
「・・・」

茶を一口すすると、たけしはその男の名を口にした。

「そいつの名は―――――――」


勇者、降臨



カインは自分の置かれている状況が信じられなかった。

事の起こりは数分前。
グラディウスで狩るべき相手を求め彷徨っていたカインは1人の騎士を見つけた。
背中に剣を背負っているようだ。
いや、あれは東洋の「カタナ」という武器だ。
「折れず、曲がらず」と絶賛されている切れ味鋭い剣の一種だ。
ただ・・・あれは通常のものより幅広で重そうだ。

「・・・ならば・・・」

音も立てず、カインは飛び掛った。

「うおっ!?」

その騎士・・・オルステッドは慌てて刀を抜く。
だが、この刀は普通のものと異なり、妙に重い。抜くのがワンテンポ遅れた。

「・・・ダメかっ!」

グラディウスがオルステッドの喉を捕らえようとした瞬間だった。

ガキィィィィッ!

カインの腕に鎖が巻き付いていた。

「早く逃げろ」

その鎖を投げた黒髪の男が静かに言った。

「邪魔をするなっ!」

カインはグラディウスを持ち直すと黒髪の男に襲い掛かった。
神槍の刃が男を襲う。
だが、黒髪の男は紙一重で避けるとカインに蹴りを入れていた。

「くっ!」

怯むことなく攻めるカイン。
だが、その男は全ての攻撃を紙一重で避けてしまった。

「・・・これならどうだ!」

跳び上がるカイン。
だが、カインの必殺の一撃もまるで通じなかった。
それどころか――――――

「今のお前にこれは勿体無いな」

グラディウスを奪われてしまったのである。

「曇った心ではこれの力は引き出せない。怒りは刃を鈍らせる」
「貴様・・・貴様、何者だ!?」
「ロト、と呼ばれている。次会う時には目が覚めていることを祈っている」

ロトと名乗った黒髪の男はそのまま去っていった。
その男が伝説を作った男だとは、カインが知るはずもない。
カインは全身を震わせ悔しがることしか出来なかった。

【「ライブ・ア・ライブ」 オルステッド 同田貫所持、逃亡
「ファイナルファンタジー4」 カイン 生存
「ドラゴンクエスト3」 勇者ロト 鎖鎌、グラディウス所持 生存】



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