音速の恐怖
――――――来る!
マリオは焦っていた。
先ほどから謎の敵の攻撃を受け続けているのだ。
敵の攻撃は体当たりのようだ。
あまりに速くて見切れていないのである。
ギュルゥゥゥンッ!
来た。マリオの顔を掠めてそれが通り過ぎていった。
無理だ。これと戦うのは無理だ。
マリオは全速力で逃げ始めた。
既に無駄であることはわかっていたのだが。
ギュルゥゥゥゥゥッ!
今度は背後から来た。
マリオが伏せるととんでもないスピードでそれが飛んでいった。
ダメだ。速すぎる。あっという間に追いつかれる。
殺られる・・・そう思ったが、諦めるのはプライドが許さなかった。
「冗談じゃない!大体俺はレゲーキャラじゃない!
まだ現役だ!もう一花も二花も咲かすんだ!」
俺は違う。ゲーム界のエリートだ。
そんな思いだけがマリオを支えていた。
手にしたハンマーを構え、それの飛んでいった方向に向き直った。
音速の絶望
ギュルルルゥッ!
音がする。来る。今度は撃ち落してやる。
このハンマーで直撃させれば一発だ。
だが、敵の動きはマリオの想像を遥かに超えていた。
ガサガサッ!ギュルゥゥッ!
それは木の上から飛んできたのだ。
「うわー!」
避けそこなったマリオの肩を直撃し、それは再び飛び去った。
「むぐぅ・・・」
肩を抑え、うめくマリオ。
立たなければ。構えなければ。備えなければ。
来る。もう何秒もしないうちに来る。
焦りながら立ち上がるマリオ。
その時、異変が起きた。
「・・・・・・ッ!」
獣の叫ぶような声。
マリオは何が起きたか理解できなかった。
しかし、それっきり、あの敵が飛んでこないので、
マリオはこの場を離れることにした。
音速の蒼獣
「これはこれは珍しきかな」
検非違使は穴に落ちた生き物を観察していた。
全身を針のような毛で覆われた、青い獣だ。
大きさは人間の子供程度だろうか。
身体のあちこちをさすりながら検非違使を睨みつけている。
「どうやらこの島のもののようじゃの。ほれ、早く上がってまいれ」
検非違使は、獣に優しく声をかけた。
敵ではないものを埋める必要はない。そう思った。
「む?何をしておる?」
獣は、穴の中でピョンピョン跳ねていた。
出られないのか?検非違使は思ったが、違った。
ギュルゥゥゥンッ!ゴキィィィッ!
次の瞬間、獣は恐ろしいほどの瞬発力で跳ね上がり、
検非違使にぶち当たり、首の骨を破壊していた。
「ヒゲ野郎には逃げられたか・・・バカが邪魔しやがって・・・
まぁいい、俺が生き残ってゲーム界で再び名を上げてやるぜ」
検非違使の死体に唾を吐きかけると、その獣、ソニックは走り始めた。
【「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」 ソニック 生存
「スーパーマリオブラザーズ」 マリオ ハンマー所持、生存(負傷)】
【「平安京エイリアン」 検非違使 死亡】
【残り41人】
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