ゲームスタート






「……そういうわけで、今日は皆さんにちょっと『殺し合い』をしてもらいまーす」
様々な世界から時空を越えて集められ、首輪を嵌められたレゲーキャラたち五十名
――その中には屈強な男だけではなく、女や年端もいかない子供、ロボット、
そして人間とはかけはなれた姿の生き物も混じっている――
を前にして、試験監督の「たけし」と名乗る中年男の説明が延々と続く。

ミシシッピー川を下る外輪船デルタ・プリンセス号から、
突如としてプログラムの会場へ拉致されたチャールズ卿は、
長年来の相棒である助手のワトソンに、こっそりと耳打ちした。
「ワトソンくん、これは容易ならざる事態だ。
 あの男の説明が終わったら、他の人たちの話を聞いてみようじゃないか」
「そこっ! 私語してんじゃねえ!」
たけしの投げ付けたナイフが、チャールズ卿の額に深々と突き刺さった。
目を見開いたまま崩れ落ちるチャールズ卿を、ワトソンが慌てて抱き起こした。
「うぁー……先生! 先生、大丈夫ですか。
 なんということだ、先生が真っ先に死んでしまうとは……
 あぁ、もし最初からやりなおすことができれば……」
「私語をするなと言っとるだろうが!」
ワトソンの首に嵌められた首輪に向けて、たけしがビデオのリモコンのような装置を向けた。
首輪に仕掛けられたLEDが、規則的な電子音と共に点滅し始めた。
「えー、さっきは言い忘れてたが、その首輪は、
 ゲームの進行を妨害したり、ルール違反を行うと、爆発するようになっています。
 ……ははっ、みんな、早く逃げたほうがいいぞー」
「うわー、先生、たすけ……」
最後まで喋り終わる前に、首輪の爆発がワトソンの喉笛を吹き飛ばした。
呆然と見守る四十八名の前で、ワトソンの脂肪に包まれた肉体はきりきり舞いをし、
そのままチャールズ卿の死体に寄り添うようにして倒れ込んだ。

【「ミシシッピー殺人事件」チャールズ卿 死亡】
【「ミシシッピー殺人事件」ワトソン 死亡】
【残り48名】




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