無題
カインは、鬱蒼とした森の中にいた。
その手には槍を握っている。
ざくっ、ざくっ。いやな音が響く。
彼は二人の人間に槍を突き立てていた。
一人は巫女の姿をした少女、一人はホッケーマスクを被った青年であった。
「きれいな、死に方を、選んだ、つもり、だろうが、そんなのは、俺が、許さん」
カインの目には陰惨な、しかしぎらぎらと燃え盛る炎が宿っていた。
「おいお前、いくらなんでもそりゃねえだろ」
カインの耳に突然このような言葉が飛び込んできた。
カインがふりかえるとそこには金色の長髪の男、ゼロがいた。
「俺には人の心なんてモノはさっぱりわからないが、お前が最低な奴だって事は確かなようだな」
「俺が?俺を差し置いて幸せになっている奴らに天誅を加えているだけだ」
ゼロの目から、明らかな怒りが放たれる。
「それが許せねえんだよ」
「やるか?」
「ああ」
二人の男は互いに相手に向かっていく。カインが先手を取ろうと高く飛ぶ。そして落下。
ゼロはぎりぎりでそれをかわす。すぐさま体勢を立て直し、回し蹴りをカインに放つ。
槍でそれを受けとめる。カインは受けとめる格好のまま足払いをかけた。
足をすくわれ、転倒するゼロ。続けて槍が襲いかかってきた。転がりながらそれをよける。
ゼロはそこから、カインの射程の外へ1度逃げた。
「…やるな」
二人の男は、再び間合いを詰める。カインが突く。顔に掠らせながらもどうにかかわす。
カインの顔にフックをいれる。カインはよろめきながらもゼロの装甲の無い部分に膝蹴りをいれる。
うつむくゼロ。間を置かずに槍の柄の部分で殴りかかろうとしたが、アッパーによって阻まれた。
今度は、カインの方から間合いを作った。
「お前の性格は気に食わないが、強さは気に入った」
カインは言う。
「気に入られたくも無いな」
ゼロが言い捨てる。
その時、二人の男は凄まじい殺気を感じた。互いから発せられたものではない。
二人ともほとんど反射的に後ろに飛んだ。
二人の居たあたりに、閃光が走った。
その閃光の直撃を受けた木々、そして男女の遺体は一瞬にして灰になった。
光が発せられた先を見る。金色の鎧を纏った騎士のような男。
「エックス!」
ゼロは叫ぶ。だがその事を理解すると同時に、新たな疑問が沸いた。
(何故、アーマーを纏っているんだ?)
「エックス、止めろ! 俺だ!」
「止められないよ」
「なに?」
「全てを壊し尽くすしか、みんなを救う方法が無いんだ」
ゼロは呆然とした。そして、こうカインに言った。
「槍男、逃げろ!」
「そうだな…逃げるぞ」
二人の男はそれぞれの方向へ逃げていく。
エックスはどちらを追うでもなく、自らの歩みを再開した。
【「ロックマンXシリーズ」ゼロ 逃亡】
【「ファイナルファンタジー4」カイン 逃亡】
【「ロックマンXシリーズ」エックス 生存】
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