無題






ヒュ〜〜〜ン、ズドォォン!

上空から襲い来る槍の一撃を、アドルはすんでのところでかわした。
「くそっ、反撃する隙が無い」
敵は再び上空に跳び上がる。そうなってはアドルには打つ手が無かった。
「V仕様にしとけばよかった」
半キャラずらしを使うために、ジャンプ能力を捨てたことが裏目に出たようだ。
「ゴメンよ、エレナ。決して君よりもリリアを選んだというわけじゃないんだ」
「この期におよんで女の名ををを!」

ズドォォン!

今回も危ういところでかわした。敵のジャンプ攻撃は必中能力を持っているが、それはRPGでの話。アクションRPGキャラであるアドルは一箇所に留まっていたりはしない。
「とはいえ、このままでは・・・」

活路を求めるアドルの目に、洞窟の入り口が映った。
「しめた、ダンジョンの入り口か」
天井の低い場所なら敵のジャンプ攻撃を封じられるかもしれない。それに「壁」のある場所なら心強い旧友の援軍も期待できる。


洞窟の中に逃げ込んだアドルを見て、カインはしばし考えた。
「・・・まあいい、しばらくは生かしておいてやる」
他にも獲物は山ほどいる。ヤツは類まれなる女たらしのようだが、それ故に最後の獲物にふさわしいかもしれん。
カインの感覚に、また別の獲物の反応が引っかかった。
「ふふふ・・・楽しみにしていろ」
幾人もの男の血を吸ったトライデントを構えなおし、カインは跳躍した。

【カイン、アドル 勝負なし】



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