無題






「お願い……もう…許して…」
「HA−HA−HA 何を言ってるんだい。頼んでいるのは僕の方だよ?」

そう言いながら、男は蛇のような目つきで少女の肢体を見続ける。
なめ回すようなその視線を感じたのか、少女は震える手を胸の前で交差させ、俯いた。
男の片手にはカメラ。そしてもう片手には− 拳銃があった。

ゲームに巻き込まれたとき、男− すなわちデビット・ゴールドマンは己の不運を嘆いた。
しかし、支給された武器が拳銃だった事を知ったときに、彼はこれを幸運だと思うことにしたのだ。
ここには、可愛い美少女も、清楚な姫君もいる。そして、彼女たちは戦闘のスキルはないだろう。
なら− この拳銃があるなら− 俺は、俺の本当に取りたい写真を撮れるんじゃないのか?

「だから、僕は君と戦う気はないんだ。それどころか君を守ってあげたっていい。
ただ、その前に君の写真を撮らせてくれ− さっきからそう言っているじゃないか」
「だ、だからってなんで」
「わかるだろう?僕は健全な男子。そして君は美少女だ。そう思うのは当然じゃないか。
 さぁ、分かったら− 脱 が な い か?」

殺しきれない興奮を声に滲ませて、拳銃を構えたデビットに脅え、息を呑み、少女が数歩後ずさる。
しかし、木にぶつかり、へなへなと腰を落としてしまう。

これなら反撃どころか立ち上がることさえ困難だろう。そう内心でほくそ笑むと、デビットは大股で歩み寄り、そして手を伸ばし邪魔な服を−

「待って……自分で……脱ぐ、から……」

ククク…やった。ついに少女を屈服させた。そう確信し、デビットは会心の笑みを漏らした。
のろのろと、ワイシャツのボタンが外されていく。開いた胸元から僅かに下着が見える。−白だ。
未だ見えぬその全貌を、そしてその下に隠された膨らみを、それをフィルムに写し取り、そしてこの手で− 支配する瞬間を。
その事を想像するだけで。デビットは爆発しそうだった。
しかし、ともすれば今にも飛びかかりそうな内心を必死に押さえつける。

「…で?まさかそれだけとは言わないだろうな。服の脱ぎ方を忘れたというのなら、脱がしてやってもいいんだぞ」
少女はボタンを外し終えて、1分近く固まっているが、その言葉に反応し、意を決したかのようにワイシャツを脱ぎ捨てた。

「ほぉ…」

予想通りスレンダーな体つきに、清楚な印象の白の下着。取り敢えずは満足し、デビットは頷いた。
「よろしい。では次は−」

だが−。デビットは知らなかった。彼女の名を。そして、彼女を下手に脱がすとどうなるかを。

次の瞬間、立て続けに様々なことが起きた。まず、突風で脱ぎ捨てたワイシャツがデビットの顔に絡みついた。
突然視界と呼吸を遮られ、パニックになりながらもそれを取ろうとしたせいで、カメラが足下に落ち− 
水たまりの中に突き出していた石に当たったのがまずかったのか、あっさり壊れた。
その瞬間、コンデンサに蓄えられていた電気が解放され、デビットに襲いかかる。

「!!!!」

声にならない悲鳴を上げて倒れるデビット。しかし− これだけでは終わらなかった。
なんとか立ち上がろうとしたデビットとそれを冷ややかに見つめる少女の視線が交錯する。
そしていつの間にか、少女の片手には−
彼は忘れていたのだ。自分の片手で持っていたはずの− 拳銃のことを。

優しく微笑むと、少女は無造作に引き金を引いた。
少女の名はカスミ。脱がされると恐るべき強運を発揮する少女−

【「スーパーリアル麻雀P3」 芹沢香澄 生存  装備 拳銃(知識がないので種類は他の人に一任します)】
【「激写ボーイ」 デビット・ゴールドマン 死亡】



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