無題
地面の中を進んでいた彼は、不意に周りの様子が変わったことに気がついた。
そう、彼は、地面の中を「掘らずに」進むことができるのだ。
だからこそ、周囲の異様な様子に、触れた瞬間、察知した。
「これは…チーズなのか?」
彼はもともと戦いを望んでいたわけではない。
地底で、火を噴いたりもするが気のいい仲間達と、平和に暮らすのが彼の幸福だった。
だが、その平和な日々は突然打ち破られた。突如現れた、あの男の手によって…
地面を進む彼らの特技は逃げ技に重宝した、が、それでも仲間は次々と殺されていった。
あるものは岩の下敷きになり、あるものは武器で破裂させられた。
奴もこの島にきているのだろうか?そして、生きているのだろうか?
信じられないことだが、奴は島を切り崩すことだってなんとも思わずやってのけるのだ。
彼は逃げた。地中を猛スピードで掘り進む、奴の追跡を逃れるために…
そこで遭遇したのがこの異常な事態だ。地面いっぱいのチーズ。
地中に、なぜこんな空間が存在するのだろう?
ボコッ
不意に横でチーズが崩れる音がした。奴か?
思わず逃走の姿勢をとったが、現れたのは、小さな子供、いや、赤子だった。
その姿に一瞬安堵したのが彼の命取りとなった。
なぜチーズの地面の中に赤ん坊がいる!?
疑問が頭に浮かぶのと、自分の体に異変が起こるのと、同時だった。
ポンプを差し込まれたわけでもないのに、体が膨らむ…メヘンゲできない!
なぜ体が膨らむのだ!?一体この赤ん坊は何者なんだ!?
赤ん坊の額が彼に触れると、まるで、いや文字通り空気の抜けた風船のように
あたり一面のチーズを掘りながら、彼の体は飛んでいった。
彼の命はここまでだった。
柔らかいチーズが硬い地面に変わった瞬間。彼の体は粉々にはじけ飛んだ。
【「バイオミラクルぼくってウパ」 ウパ 生存】
【「ディグダグ」 プーカ 死亡】
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