無題
スペランカーを打ち損ない、穴に落ちた源は
月が真上に昇る頃になってもまだ穴の中に居た。
「かーっ、まったくついてねえぜ。」
何度か這い上がろうと試みたが、土が柔らかすぎて上手くいかなかった。
…もはや、水も食料もない。地中奥深くで飢え死にするだけかと思われたその時、
「お前、なにをしている?」
上の方から突然声が聞こえた。見上げると、一人の男が居た。顔は月の逆光で良く見えない。
「いやー、落とし穴にかかっちまってこのざまよ。ちょいと、助けてくんねえかい?」
少しの間を置いた後、男はこう尋ねた。
「助けてやってもいいが、お前、彼女はいるか?」
「え、まあ、いるけどよ…。それとコレと何の関け」
言い終らないうちに、男は何か鋭いものを構えて降ってきた。こんなことを叫びながら。
「貴様も幸せ者かっ!」
次の瞬間、源の体にはスキーストックが突き刺さっていた。口から入り、背中に抜けると言うなんともむごいものであった。
男は、ストックを引き抜くと同時に信じられないような跳躍力で穴を抜け出た。
「長さが足りないように感じたが、この槍もなかなか使い勝手が良いな。
しかし、こんな男でも彼女もちとは…。いなければ助けてやったところを。」
カインはストックについた血糊を払いながら呟いた。
「この槍の元の持ち主を殺したあの男、あの男ならば分かり合えるような気がする。
俺と同じにおいを感じた…。」
【「ファイナルファンタジー4」カイン 生存:透のスキーストック装備】
【「大工の源さん」源さん 死亡】
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