無題
シレンに支給されたディバッグの中に入っていたのは、
三日分の食料(※大きなおにぎり)と「合成の壺」だった。
たまたまプログラムの初期に運良く「風魔の盾」を入手したこともあり、
シレンは与えられたこの幸運を、出来る限り有効に活用することに心を決めた。
そして今、これまで場つなぎの防具として使っていた皮の盾+12を合成の壺に入れ、
シレンをプログラムの勝者とするに足る、強力な盾が完成したのだった。
自分の幸運をほくそ笑んでいたシレンは、背後から感じる気配に素早く振り向いた。
すぐそばでは一体のサーベルゲータが、じりじりとシレンとの間合い詰めつつあった。
盾なしではとてもこの相手には勝てない!
どうする? 今はこの合成の壺を抱えたまま逃げるべきか?
……いや、大丈夫。この間合いなら、今すぐ合成の壺を壁にぶつけて壊し、
落ちた風魔の盾を拾い上げて装備すれば、ギリギリで攻撃を受け止められるはずだ。
素早く頭の中で状況を分析し終えると、シレンは合成の壺を壁に向かって投げ付けた。
もちろん遠投の腕輪を付けたまま投げるような、初歩的なミスはしない。
壁に叩きつけられた合成の壺は衝撃で粉々に砕け、
中に収められていた風魔の盾+17★4が地面に転がった。
……今だ!
シレンは自分の後をぴたりと追ってくるサーベルゲータも意に介さず、
風魔の盾+17★4に駆け寄った。
そして、風魔の盾+17★4まで後一歩のところまで近付いたとき、
シレンの足元で地面がズボっと陥没した。
落とし穴!?
次の瞬間、シレンの体は地面に叩きつけられていた。
――そして頭を振りながら立ち上がったシレンは、
自分がパワーハウスのど真ん中に落ちてしまった事に気付くのだった。
【『風来のシレン』 シレン 死亡】
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