無題
ラッキーが二つ、重なった。
一つは、私に与えられた武器が十字架だったこと。アーサーなら
ともかく、私にとって十字架は充分強力な武器だ。
そしてもう一つ、俺の前に現れたのが、どう見てもモンスター
なこと。1頭身のトカゲとでも言うか、少々マヌケな印象は受けるが
明らかにモンスターだ。魔物だ。バケモノだ。
と、なれば。破邪の武器の王道、十字架は効果テキメンなはず!
「喰らえっ!」
私は、必殺の気迫を込めて十字架をそのモンスターに投げつけた。
が、そのモンスターは私の十字架を易々と受け止めた。そして、
「感謝するぜ、ドラキュラ退治の英雄サンよ……こいつは、オレに
とって唯一の武器なんだ」
「何っ?」
モンスターのくせに、十字架を武器として使うというのか?
私は不審に思いながらも、モンスターの殺気に反応してガードの
姿勢をとった。投げつけてくるのか、殴りかかってくるのか……
と思いきや、モンスターはいきなり炎を吐きかけてきた。十字架は
どうした、おい、と思わず突っ込みたくなる。
が、そんなヒマはなかった。炎を浴びた私の体は、一瞬虹色に
光ったかと思うと、
「っ!? め、目玉焼きっ? なんで? ど〜してっ?」
に、なってしまった。困惑している目玉焼きな私に、十字架を
手にしたモンスターが近づいてくる。
「いっただきま〜す♪ っと」
ごっくん、と一飲み。
それが、私の聞いた最後の音だった……
【『デビルワールド』プレイヤー1生存】
【『悪魔城ドラキュラ』シモン・ベルモンド死亡】
前話
目次
次話