無題






芹沢香澄は一人、木のうろに隠れていた。
彼女は普通の人間だが、周りで戦っている連中は死闘を切りぬけた猛者どもばかりなのだから、
生き残るにはなかなか賢い方法であったといえるだろう。
とはいえ、ずっと隠れ続けるわけにもいかない。誰か強い協力者を探し、
最後の二人になるまで猫を被り、油断した隙を襲う。
彼女が優勝するには、これぐらいしかない。
それは、香澄にも分かっていた。だがその協力者を誰にするのか。
半端な強さでは、死期を早めるだけだ。
丁度その時、金色の鎧を来た青年が通りかかった。こんなに目立つ格好をしているのだから、
戦闘もしているはず。それでいて傷がないのだから、きっと強いに違いない。
香澄はそう考えた。そして、かねてよりシミュレートしていた行動を
実行に移す事にした。
うろから飛び出し、青年にぶつかる。そして言う。
「助けて…!怖くて怖くて…」
「そう。でも、大丈夫だよ」
完璧だ。青年の台詞も、台本通りだ。しかし、その先は、
香澄の想像の及ぶところではなかった。
「君に、救いを与えよう…」
青年の腕が、銃のようなものに変わる。そしてそれが、
香澄に突きつけられた。
「えっ」
香澄は声も出ない。青年は、優しく、
それでいて無垢な残酷さを秘めた笑顔を浮かべていた。
銃から光が放たれる。それが、香澄が最後に見たものだった。

【「ロックマンX」エックス 生存】
【「スーパーリアル麻雀P3」芹沢香澄 死亡】



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