無題
老人は廃屋に身を潜めていた。
戦闘に自信がないわけではなかった。老人は法術に長けていたし、
事実先程も不死身を標榜していた筋肉バカを灰燼に帰したところだ。
(支給品の「コックおばさんの聖なる手榴弾」を使ってしまったのは
惜しかったがね)
だが、スイートルームはもちろん馬小屋さえ見つかっていない現況では
魔力は貴重だ。無駄にできない。
その気になれば、奥の手・無敵のカドルト神に変身することもできるが、
もし相手に力を吸収する能力や、真実を見破る力があれば逆に
致命的なこととなる。それに、目立つことは得策ではない。
情報が必要だ。
「目立った動きをしているのは、カチュアとかいう娘らしい。
アンデッドの大軍団を編成しているが…。アンデッドを土に返すなど
わしにとっては造作も無いこと。泳がせておくべきか。
戦士・剣士のたぐいどももかなりの数が生き残っているようだ。
奴らはやっかいじゃな。
ピンク色の丸い怪物については、どれも恐ろしい噂しか聞かん。
正体も何も不明じゃ。当面こいつを避けて動くべきかもしれん。
そして、Level1探検家…真っ先に死んだはずのあの男。あいつがなぜか
鍵となるような予感がする。無敵の戦士が最弱の魔物に倒されるように…」
さて、そろそろ移動せねばならん。少なくとも魔力を回復できるような
隠れ場所を見つけておかねば。
"KANDI"
老人は呪文を唱え、ピンク色の怪物がいると思われる方向を確認すると、
反対の方角へ向かい、闇へと消えていった。
【Wizardry I&IV カント寺院の僧正 移動中】
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