無題
「チッ、まったく。なんでこんなわけわかんねぇことに・・・」
などと愚痴をこぼしながら白ランを着たアイパーの青年が歩いている。
「だいたいなんでデイバックの中身が鉛筆だけなんだよ、嫌がらせかこりゃあ?」
ゲームが始まってから早々、崖から足を踏み外し、しばらく海岸で気を失っていた青年は
ブツクサ言いながら崖の上へ登れそうな場所を探している。
しかし常人なら間違いなく即死しそうな高さから落ちて気絶しただけですんだのは
相当な生命力のある証拠だろう。
「おっ、ここらへんからならどうにか登れそうだな。よし」
青年は崖の傾斜がいくらか緩やかな場所を見つけ、そこをよじ登っていく。
「ふぅ、やれやれ・・・と。それにしたってこんな変な首輪つけやがって一体何をしろっつーんだよ」
青年は自分がどういう立場に立たされているのかまったく認識していないようである。
「ん? アイツは・・・? どっかで見たような気がすんなぁ」
ふと、崖にたたずむやたら図体のでかい人間が目に入る。
「ああぁ・・・こんなはずじゃ・・・殺す気なんかなかったんだよぉ! うおぉぉぉぉぉ・・・」
その人間は泣き叫んでいるようにもただ吼えている様にも見えた。
「う・・・なんか悪寒が・・・」
青年の背筋に何かが走った、そしてその時その人間が青年の方に気づいた
「!!!!!!! ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」
青年はその人間のあまりの顔の醜さに驚愕し、叫び、猛スピードで逃げ去った。
「・・・何よ、このあたいの美しい顔に驚いたのかしら? うふふふふふ・・・」
その人間の顔はもともとの仏頂面が涙と鼻水でグチャグチャになっていて
お世辞にも美しいとは言えない顔になっていた・・・。
「ちょっとアンタ〜待ちなさいよー」
こうしていつまでも続くと知れぬ追いかけっこが始まった・・・。
「くにおくんシリーズ」くにお:下から脱出後逃走中
「熱血硬派くにおくん」みすず:くにおを追跡中
前話
目次
次話