無題
忍。影に生き、そして影に死す存在。
彼等は守るべき者の戦い、そして死んでいく。
とある2人の忍も例外ではなかった。
2人は大量の敵に囲まれ、苦戦を強いられていた。
「はぁはぁ・・・兄者、大丈夫か?」
「ぜぇぜぇ・・・大丈夫だ。お前こそ、大丈夫なのか?」
「大丈夫・・・しかしキリがないな」
2人は迫り来る敵に手裏剣を投げて投げて投げて、なくなったら回収しまた投げて投げて投げて・・・それの繰り返しである。
しかも、敵は倒しても再び立ち上がって迫ってくる。
「無駄よ。そんな手裏剣じゃ、このゾンビ達には通用しないわよ」
ゾンビの向こうから、女性の声がした。このゾンビ達を操っている奴だ。
「使者を弄ぶような真似をしおって・・・」
「だから何?彼等だって、私の理想を実現する為の踏み台になれるんだから本望じゃないの?」
女は開き直ったかのようにそう言い放った。
「くそ・・・外道が!」
弟の方が再び手裏剣を放った。しかし、手裏剣を敵に命中させても、敵は再び立ち上がって迫ってくる。
動きは遅く、攻撃も大した事はないが、こう大勢で来られると流石にどうしようもなかった。
「せめて爆弾さえあれば・・・」
普段、彼は爆弾やトロッコなど、数多くの武器や道具を所持していたが、この島に連れて来られた際に、手裏剣以外の武器は全て没収されてしまったのである。
「フフッ・・・もうお終いね」
女は狂気の笑みを浮かべる。2人はここまで気が狂った人間を見た事はなかった。
「・・・じゃじゃ丸、拙者が突破口を開く。お前はその隙を突いて逃げろ」
「な、何を言っているんだ兄者!?逃げるなら一緒に・・・」
「馬鹿者!!・・・我等は忍だ。兄弟の絆など、忘れてしまえ!!」
「そんな・・・兄者・・・」
そんな二人のやり取りを見て、女・・・カチュアは不愉快な気持ちになった。
ナンデアンタタチノヨウナヘボキョウダイガナカヨクシテンノヨ?
「さあ、トドメを刺すのよ!」
カチュアはゾンビ達に命令した。ゾンビ達が一斉に2人に近づく。
「行くぞ!」
そして彼は跳躍し、次々にゾンビを踏みつけて行った。
彼に踏みつけられたゾンビ達はその場に崩れ落ち、ピヨピヨって状態になっている。
「なっ・・・」
女は驚愕した。まだこんな力が残っていたというのか!
「今だ!行けぇいッ!!」
兄の言葉に、じゃじゃ丸は涙を飲んでその場から駆け抜けて行った。
(兄者・・・ご武運を・・・)
じゃじゃ丸は、これが兄との永遠の別れになる事を予感しつつ、その場から逃げる事に成功した
「行ったか・・・」
弟が無事に逃げ切った事を把握すると、彼は安堵した。
(手裏剣を投げる事しか脳のない拙者とは違い・・・数々の忍術を使いこなせるお前に嫉妬した事もあった。
だが・・・お前は拙者のたった一人の弟だ。生きろよ・・・)
そして、彼の身体はゾンビの群れの中に消えて行った。
カチュアは、彼の最期を見届けるとゾンビ達を引き下がらせた。
「・・・安心しなさい。また、弟に会わせてあげるから」
カチュアは笑っていなかった。
【「忍者じゃじゃ丸君」じゃじゃ丸 逃亡】
【「タクティクスオウガ」 カチュア 生存】
【「忍者君」 忍者君 死亡→アンデット化?】
前話
目次
次話