休戦締結
八雲辰人との交戦のしばらく後。
まだ学会員たちによるヘマが起きる前のこと。
蔵女と葉月の前には、一人の男が姿を現していた。
彼女達にとっていずれ来るべきであろう者。
「まさか、大ボスが直に来るとはね……」
葉月が話し掛けた。
そう、彼女達の前に姿を現したのは、ヴィルヘルム自身である。
「余の名は、ヴィルヘルム・ミカムラ。
この島の創設者であり、新たなる新天地を作る者」
「私は、蔵女」
「私の名前は、葉月。 彼女と共にこの世界の崩壊を防ぎに来た……」
次に口を開いたのはヴィルヘルム。
「単刀直入に言おう……。 何をしにきた?」
「先ほど、葉月の言った通りに世界の崩壊を防ぎに来たのだが……」
蔵女が返答をした。
だが、それだけでは、ヴィルヘルムが納得するはずもない。
「わざわざ遠く……、いや全くの異次元から管理外の管理者が来る理由がそれだけとは思えんがな……」
口元をしかめながら、彼は二人に向かって答えた。
「ふむ、説明が足りなかったか……。 此方としても其方と敵対する理由はないのでな」
そうすると蔵女は、自分達二人がこの世界にわざわざ来た理由と目的を彼に話し始める。
もし、この世界が崩壊したら、自分達の方へにも余波が来る可能性があることを。
それを快く思わなかった管理者がわざわざ管理外の世界に、二人を使いに出した事。
「そして、其方が世界の壁を頑丈にしてくれたせいで、力が半減したがな」
苦笑いしながら、彼女は、最後にそう付け加えた。
「此方もいらんおせっかいに対して力を注いだせいで、集め蓄えた分の魔力を使い切ってしまったがな……」
此方も苦笑ししながら、皮肉を彼女達に返した。
干渉を断つ為に、ヴィルヘルムは、瞑想でせっかく強大になった魔力を捨て、
二人は、断たれた為により力の減少と死ぬ可能性を得た。
二人にとっては、ヴィルヘルムは近づき。
ヴィルヘルムにとっては、二人が手におえる可能性のある範囲に。
「お互いに交戦するのは、得策ではない。我らの目的は、世界の崩壊を防ぐ事。
お主の目的に敵対する理由はないのだが……」
「あくまで邪魔はしないというわけか……」
「そうだ。 それに今お主に死なれては、この世界が混乱するのは必須。
そのくらいなら協力してやらんこともないぞ?」
ヴィルヘルムは、考え出した。
今ここで二人を始末しにかかるか、それとも仮初の同盟を結ぶかについてを。
(世界の崩壊を防ぐのが目的なら、別の道が選ばれれば余の敵となる事もあるか……。
かといって、この二人の戦力は非常に厄介だ。
今戦えば、余とて勝ち残る自信はない……、ならば……)
ヴィルヘルムが考え出したのを見た蔵女は、しめたと思った。
そして、彼が此方に打算してくれるように押しを入れるため再び話し掛ける。
そう、八雲辰人の事である。
それを聞き、ヴィルヘルムは考えを決めた。
そして二人に提案をした。
彼女らがその危険因子を追いかけている間は、敵対せず、協力関係にあろうと。
「さて、どうする?」
「よかろう……。 此方としてもそれは一番望むところだ」
また二人もそれを受け入れた。
今、ヴィルヘルム側と八雲辰人と言う二つを敵に回すのは、厄介であると判断したからだ。
「締結と言う分けだな。 では、長居は無用だ。 余は、中央へと戻らせてもらおう……」
当初の目的を達成したヴィルヘルムは、そうするとさっさと姿を消し帰路へとついてしまった。
「同盟締結というわけか……」
話し終えた蔵女の横から葉月が出てくる。
「当面の所は、これでよかろう……。
その後も持続させるかは、またその後の情勢だな」
「私たちは、私たちの目的を追いかけるか……」
「うむ、今は、それが最優先事項だからな」
【ヴィルヘルム・ミカムラ 鬼 状態○】
【蔵女 招 状態○(力半減)】
【葉月 招 状態○(力半減) 持ち物 日本刀】
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