OP






 見つけた。
 これこそが余の願いを叶えるべきものなのだ。
焦る事はない。 まだソレの完成には時間がかかる。
ここまで待ったのだ。 長い年月で廃れ行く中、やっと夢を実現させる事のできる代物。
この機会を逃す手はない。
 まだ時間はある……。 その間により計画を完璧なるものへとする為に。



 「う、あ…………」
 意識がふらふらとする。
目の前の風景がぼんやりとしてるのが解る。
衝撃の際に頭を強くぶつけたらしい。
 「ここは……。 私何で……」
意識を失う直前までいた場所とは、うって変わった風景に彼女は困惑した。
 「ダメ、頭が痛い……」
 (そうだ、イデヨンを起動させようとしたら暴走して……)
 ぐったりと木に持たれかかると彼女は、そのまま再び意識を失った。
彼女の名は「アーヴィ」と言った。




 闇の中、揺らめく影が水晶をじっと見つめていた。
 「失敗したか……。 どうやら全く魔力のない招かざれる者達もいるようだな」
 「あらあら、口ほどにもないわね……」
 もう一つ、影が水晶の前に浮かび上がった。
 「どうするのかしら? 要らないのは、私の贄にしてもよろしくってよ?」
 「初音か……。 間引く……。 力のないもの、目覚める事の出来なかった者は淘汰し、そしてその命を力と変え新たなる者の召還を……」
 「あら、勿体無い……」
 クスっと笑いながら言う彼女の姿は、実に妖艶だった。
 「いやいや、総帥、多少の犠牲は必要というものですよ」
 更に新たなる影が二人の前に姿を現した。
 「その役目、この私、ケルヴァンが仰せ仕りましょう」
 「頼んだぞ……。 余は、魔力の回復の為にしばらく瞑想に入る。 次なる者の召還も考えねばならんしな」
 「力の提供も終わったし、私は、好きにやらせて貰うわ。 安心して、あなたたちの邪魔はしなくってよ」
 「では、早速私は、部下の魔物達に命令を……」
 会話が終わると三つの影は、順に闇の中へと姿を消していった。



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