OP
その場に集められた人間の中に、事態を理解しているものなど誰もいなかった。
何しろ全員が、夜寝ている間に連れ去られて今ようやく目をさましたばかりなのである。
彼らが目を覚ましたのは暗い倉庫のような密室だった。
「おい橋本、一体これはどういうことだよ?」
「俺が知るわけないだろ?」
小学生たちが恐怖におびえている。
「ばあさんや、一体何が起こったのかの?」
「さあおじいさん、夢でも見ているんですかね」
老夫婦が呆然と立ち尽くしている。
「親方、俺たち一体どうなるんすか?」
「ええい、大工たるものこんなことでいちいちビビってんじゃねえ!!」
大工の師弟が顔に青筋を浮かべている。
中でも一番騒がしい親子がいた。
「カツオ、これもあんたの仕業ね!!」
「そんなわけないだろう姉さん。ボクにこんな力は無いよ」
「そうですよサザエ。馬鹿なことをいうんじゃありません」
そのいつもは愉快な一家も、さすがに不安を隠せない様子だった。
「そう言えば、お父さんの姿がないですけど」
「本当ねえ、どこにいってるのかしら」
その時だった。薄暗い倉庫の中に光が灯された。そして天井の梁の上に一人の老人が立っていた。
「やあみなさん。今日ここに集まって貰ったのは他でもない、みなさんを罰するためだ」
その老人の姿に、全員が息を呑む。
「お、お父さん!!」
「磯野さん、これは一体何の冗談ですか?」
老人、磯野波平は淡々と答える。
「この中に許されざる罪を犯したものがいる。そう、昨日ワシの盆栽を壊していったものだ。
ワシは憎き犯人を捜そうとしたがどうしても見つからない。そこでワシは考えた。どうせなら全員しんでもらおうとな」
その告白に、全員が愕然とした。
「そう、思い返してみれば君達はいつもワシを軽視していた。ハゲだの電球だのと毎日のようにワシの頭をからかった。
もうワシは我慢の限界だ。これを期に、全員に死んでもらいたい。
しかしワシが直接手を下すのももったいない。そこでみんなにはこれから殺し合いをしてもらう。
最後まで生き残った一人は、命は助けてやるし商品としてワシの盆栽と髪の毛の一部をあげよう」
「ふざけるな、だれがそんなものに従うか!!」
「そうですぞ磯野さん、馬鹿なことはおやめなさい」
青年と老人が波平の言葉に反駁する。それを波平は愉悦を込めた目で眺めた。
「やれやれ、反抗分子には早々に消えてもらいましょうかね」
波平がそう言うや否や、二人の首に付けられていた爆弾が爆発した。
宙を舞う二つの首。
「アニキ!!じいちゃん!!」
死体に駆け寄る少年。
「さて、ワシが本気なことはわかっただろう。それでは早速ゲームスタートじゃ。
ワシに逆らったものはああなるということを忘れずにな。なお、開始後三年以内に死者が出なければ全員の首輪を爆発させるぞ。
それでは健闘を祈ろう」
そして四十人の参加者たちは、それぞれ彼らが毎日暮らしている町内の別々の場所にワープしていった。
【ゲームスタート】
【中島のおじいちゃん 死亡確認】
【中島の兄 死亡確認】
残り40人
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