プロローグ
目の前に光が満ちて、意識を失っていた脳が覚醒し、彼女は目覚めた。
彼女の名前は沢本いずみ、最近まではごく普通の街にすみ、転校先の高校でいじめを受けていたごく?…普通の女子高生だった…
だったである。
クラスメイトからのいじめに耐えきれず、彼女自身が純真なクリスチャンだったこともあり、彼女の住む街の外れにある古いラテン協会のシスターにいじめの相談をしにいったことで彼女の人生は変わった。
協会にいるシスターは、カトリックとは正反対の悪魔信仰の証であるダブルヘッドクロスをつけ、ウイスキーや煙草をだらしなくすい、どちらかといえばシスターというよりマフィアの情婦と言われればしっくりくるとんでもないシスターだった。
それもそのはず、協会のシスターは、世に蔓延る悪である殺人鬼達を狩る闇バチカンという組織に属する悪魔よりのシスターだったのだ。
そのシスター、サタニスターに体内で飼っている品種改良したミミズを人に寄生させて忠実な手下にし、強盗をしていた殺人鬼に捕まり、あわやミミズ人間にされそうな所を助けられ、そのまま仲のよい関係を続けている女子高生なのである。
(……ここ、何処だろう。)
彼女は今の状況をいぶかしんでいた。彼女は、本来ならサタニスターに無理やり世界中の殺人鬼を集め、最強の殺人鬼を決める非合法の殺し合い、世界最強殺人鬼決定戦の会場に居たはずだ。確かについさっきまでは会場に居たはずだが、彼女は今、全く見覚えの無い場所にいた。
その場所を一言で表すなら、
「目が酔いそうな場所」だ。
広さは高校の体育館位か、結構な広さの円形の空間で、周りにカラフルな飾りや置物がおいてある。
イースターのウサギの巨大なピンクのぬいぐるみ、恐らく等身大だろうクリスマスでおなじみのサンタクロースの人形がなぜか6体ほどおいてあり、壁という壁に紙で出来てるであろうカラーチェーンがつけられてある。それ以外にも、目がいたくなるほどの陽気でカラフルな飾り付けがこれでもかと飾り付けられている。……いずみはぼんやりと、この飾り付けをした人物はかなり趣味が悪いと思った。
飾り付け以外にも発見はあった。この趣味が悪い場所には、いずみ以外にも人が大勢居た。彼らも訳がわからないというような顔で周りを見渡していた。その殆どがいずみから見たら奇妙な格好をしている。いずみは、その中に見知った顔を見つけた。
「サタニスターさん!墓井田さん!」
青い修道服をきた大柄な女性、いずみにとっては馴染み深い悪魔よりのシスターと、この中でも浮いていた見るからにサイボーグ感丸出しの友の仇打ちの為に世界最強殺人鬼決定戦に参加していた中学生の墓井田鉄郎。いずみの知り合いであるこの2人の姿を見つけ、声をかける。
「いずみ!!あんたも此処にきてたのかい!」
「うお!いずみ、お前も個々にいたのか?」
ふたり?…もいずみの姿を見つけ、話しかけてきた。
「はい…気がついたらこの変な場所に連れてこられてて、…サタニスターさん、墓井田さん、ここってどこですか?」
「…残念だけど、あたしも今目が覚めた所だからね、全然わかんないよ。」
「俺もだ、これは一体どういうことなんだ?」
2人がそう言った時だった。
「こんにちわ、皆の衆。」
いずみ達以外にもざわついていた群集の前に、三人の奇妙な人物が現れた。
まるで瞬間移動したかのように、最初からそこにいたかのように彼らは其処にいた。
三人の内2人は、いずみの膝までしか慎重のない青いローブをきた小柄な人物で、男か女かもわからない。もう1人は、かなり個性的な恰好をした老人だった。
ずんぐりして背の低く、ド派手な黄色いスーツに、紫のブーツを着ていて、かなり目立っていた。更に特徴的なのは、右手に心臓の形をした時計をもっていることで、ずっとそれをいじくり回している。
その老人は、集まっている群集をぐるりと見回し、にっこりと笑いながら満足げに頷き、話し出した。
「君達を此処に集めたのは、他でもない私だ。…突然のことで混乱しているだろうが、私のささやかな願のために集まってもらった。説明するから少し静かにしていてもらおう。」
最初の連れてきた宣言で、騒ぎ出した群集に静かにするように言う老人、すると不思議な事にみな口をつぐんだ。
彼らは感じ取っていた。本能により、この老人の危険性を。
「…結構、結構、静かになってくれたようだな。よし、君達を呼んだ理由は、ちょっとしたお願いを聞いてもらいたいからだ。」
老人はそう言うと、まるで今日の天気の話をするような軽い口調でこういった。
「これから君達は、最後のひとりになるまで殺し合いをしてもらう。」
その場の空気が静まった。
「これから君達には、私が用意した特別な会場にて殺し合いをしてもらい、最後の一人になったら家に返してやろう。…勿論ただとは言わんよ。特別に願いを何でも一つだけ叶えてやろう。君達にはリュックを飛ばす会場内にて置いておく。中には「三日分の食料と水」「コンパス」「筆記用具」に「ランダム支給品」「参加者名簿」を入れておく。これらを有効に利用して優勝をねらってくれたまえ。」
HAHAHAHAHAHAHAHA!!
老人がそう言った直後だった。その場に耳障りな笑い声が響きわたったのは。
笑い声を上げていたのは、一人の男だった。
紫のスーツをきて、まるでメイクをしたような真っ白な顔、緑色の髪をして、口が耳まで裂けんとするようにあいている。
周りにいた者が自然と2〜3歩裂けた。
「ご老人!なかなかぶっ飛んだ企画をやるじゃないか!アイディアは認めてやろう!」
そう言ってまた笑い出す男、しかしふと真顔になり。
「…アイディアはいいよ。だけどなぁ。俺は生憎とこういうゲームをプロデュースするのは好きだが、されるのは趣味にあわねえし。この会場やあんたの筋書きも気にくわねぇ。こんなの、そこらの売れねえ四流のコメディアンの方がよっぽど爆笑満点の脚本がかけるぜぇ。」
道化師の言葉に老人は気を悪くすることなく。
「そうかね。…まあ老人の楽しみだと思ってつき合っておくれよ。君達、自分の首をみてみなさい。」
老人の言葉に道化師と群集は自分の首を確認する。すると全員の首にごつい首輪がつけられていた。
「その首輪は少し愉快な作りをしていてね。例えば…」
そこで老人はにっこりと笑う。
「こんなことができる。」
バァン!!
軽い爆発音が響き、群集の中の一人の男の首輪が爆発し、まるですいかのように頭が吹き飛んだ。
「…さて、わかったかね。君達、それとジョーカー君、君達が乗り気であろうとなかろうと、どっちみち生きて帰るには殺し合うしかないのさ。」
その言葉には誰も文句をしめさず、道化師もふんと鼻を鳴らすだけだった。
「さて、些か急だが時間が押してる。君達を会場に送る。それと言い忘れたが私の名前はデズモンド、デズモンド・タイニーだ。覚えていてくれたまえ。」
そう老人が言うと、老人の体が燃えるように光り出した。心臓の形の時計が光っている。
「…ふふ、それでは健闘を祈るよ。」
次の瞬間、一際明るい光が会場を満たし、この場所にいた人間を飛ばした。
「…ふふ、ふふふふふ。……楽しませてくれ。罪深き魂の持ち主達よ。」
その場に残った老人が言う。
「…おまえたち、ここをかたずけておけ。」
青いローブの小柄な二人組に命令を下しながら。彼はおもう。
運命は動き出したもう。
[殺人鬼キャラバトルロワイアル開幕。]
[チーホイ@ゾンビ屋れい子]死亡
残り69人
前話
目次
次話