漂着
打ち寄せる波の音。
上方から聞こえる、ウミネコの声。
照りつけるような日差しに焼かれる身体。
汗と塩でべた付く衣類。
そして、それらの情報の咀嚼を始める僕の脳……
「ここは……?」
体を起こした僕が目にしたのは、白い砂浜と、真っ青な海。旅行会社のポスター等で見られるような類の光景だ。
目覚めたばかりだというのに、まだ夢の中に居るのではないかと思えてしまう。
だからといって、頬を抓るなどといった、緊迫感の無い行動をとる気にもなれなかった。
そう、これは現実だ。
そう。僕は、家族との旅行中に海難事故に巻き込まれたのだ。
個人的には旅行等趣味では無かったのだが、
家族からの熱望と、兼ねてよりの懸念事案が解決したこともあり、旅行への同行を了承した。
それが、まさかこんな結果を引き起こそうとは……
そんな反省とも後悔ともつかない思案にふけりながらも、
僕の目は四方を注意深く観察し、そしてある一つの警報を僕の中枢に発していた。
違和感。
最初から感じていたそのしこりは、辺りを注意深く観察すると共に、確信へと昇華される。
この場所には、あって然るべきである、最も大切なあるファクターが欠落していたのだ。
「僕……独りなのか……?」
そう。そこには、人の気配が全く無かった。
砂浜、海、空、森、山……
見渡す限りに広がる自然の中には、人の立ち入った形跡が見られない。
船も、飛行機も、家も……何一つ無い。
そう、これは……
短絡的に考えれば、これは……
「まさか、無人島に漂着した、なんて馬鹿げたことになっているのか……!?」
それは、子供向けの小説や漫画にありがちなストーリー。
だが、自分を取り巻くこの環境は、自分が正にその物語の中の一登場人物であるのだと主張する。
「そんな馬鹿げたことが……!? いや、しかし、肯定するにも否定するにも、判断材料が不足し過ぎている
先ずは自分の置かれた状況を確認しなければ――!」
そう、冷静になってみて、初めて気付いた。
自分の手に嵌っていたはずの、腕時計が無くなっていたことに。
いつも肌身離さず身に付けていた、父から貰った腕時計。
――デスノートの切れ端の仕込まれた、腕時計が無いことに――
【一日目 / 朝 / B-3 入り江の北側】
【夜神月@DEATH NOTE】
[状態]:健康
[空腹度 / 最終食事時間・内容]: 空腹、乾き / 0日目夜7時に家族と共に食事
[装備]:海水の染み込んだ衣服
[道具]:なし
[情報]:なし
[思考]:
基本:自分の置かれた状況を確認。
1:周囲の状況確認。
2:食料・飲料水の確保。
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