混沌すぎるバトルロワイアル「プロローグ」
四角形の、上、横、下、全てが白一色の殺風景な空間、その広く、無機質な印象を抱く空間の中心に、2体の巨大な像が立っていた。
その2体の像は、片方は女性、片方は男性の形をしており、その両方とも顔と胸の部分が無く、ただただ空洞が広がるばかり。
その、ある意味神秘的な、あるいは邪悪さを感じるかもしれない像の周りに、一風変わった何かが集まっていた。
そこにいるのは、何ら共通性のない、誠に奇妙な、生き物かすらわからない者も混じっていれば、極普通の人間にも見える者もいる。
宇宙にすむ地球外生命体や、隅の方にとぐろを巻いて押し込められている軟体動物のような巨大な怪物、それとどっこいどっこいの大きさを持つ全身の皮膚がない巨人の人体標本のような人型の怪物。その他にも人間を殺すために作られた殺人ロボット、とある宇宙開拓に関わることになる企業が作り出した人と見分けがつかないアンドロイド。その他の様々な面子が集められていた。
その集団に共通する事は、全員が何かに縛られたようにその場を動かないことだろう。
そんな様々な種族が集められた中、その殆どが懸念など、この状況に対する反応を示している。しかしどうやら口も聞けなくなっている用で、ざわめきなどは起こっていない。しかし、そのような雰囲気は伝わってくる。
『ようこそ、代表者達よ。』
その長い硬直状態の中、突然空間の中心に存在する像が喋り出した。しかし、その声からは何の感情も感じず、実に平坦な口調だ。
集められた様々な種族は、突然喋り出した像に驚いているようだ。
『此処に君達を集めたのは私だ。君達にはこれから、ある行いをしてもらう。』
困惑している雰囲気の種族達を無視し、淡々と喋る像、周りの種族の多くは頭が状況についていけていないようだ。まあ、無理もないだろう。この意味不明な状況下では、それがふつうの反応だ。
奇妙な像は、その巨大な体からある種の神秘的な雰囲気を醸し出しながら、その平坦な声で様々な種族を集めた理由を話した。
『これから此処に集められた様々な者同志で、殺し合いをしてもらう。』
因みに拒否権は存在しないと像が喋っている間、先程の発言でその場の空気が凍り付いた。
『納得していない個体もいるかもしれないが、ここに集められたメンバー全員が殺し合うと言うことは、私によって既に決定されていることであるからして、たとえ君たちが不満に思っていたとして、殺し合いという状況を回避するとこは私が許可するという選択を許可せず、また、殺し合いをし、生き残った者だけを帰還させるという考えを覆す選択もしない積もりだ。つまり、諸君が日常という安定したような生活に戻るためには、他を殺し尽くすという選択を選ぶ以外になく、また、この場の参加者の中には殺し合いを助長する行動をとるであるような個体を選び、また、種族を選び、此処に集めているのであって、故に殺し合い、または生存競争を起こす確率はかなり高いことを理解してもらいたい。』
無駄に長く、それゆえに冷たさを与える口調で喋り、説明を続ける二体の像、その抉れた顔と胸には、まるでスライムのように歪みながら、様々な顔を映しだしていた。
『此処に集められている個体全てに、殺し合いを始めるに辺り肉体的に不利な差を埋めるため、基本的な物、地図や食料などを入れたデイバックを殺し合いの場にて一人一つ置いておく。その個体が使えるか否かに限らずにだ。一つ一つのデイバックには3つ、ランダムにアイテムを入れてある。何が入っているかは確かめるまでわからないが、確率がよければ良いもの、武装武器などが入っている可能性も0ではない。』
其処まで説明を終えた像は、唐突に言葉を切る。
『なお、諸君の脳に当たる部分には、それぞれ小型の特別製の爆弾を埋め込んである。証拠を見せよう。』
ドパァン!!
すると、この場に連れてこられていた四足歩行のほ乳類、雑種の犬の脳が、いや、その全身が唐突に、前触れもなく破裂した。
まるで冗談のように、膨らんだ風船を割るように破裂した犬、その光景は、まるで何かの冗談のように見えもするが、紛れもない現実だった。
生物がいきる上で必要な絶対的な器官、脳に爆弾を入れられている。その事実に、大多数の者達は状況を理解し、驚愕の感情を抱くと同時に、恐怖や畏怖を感じた。
『此処に集められている個体全ては、一つの個体のみが帰還する権利を得る。各個体間でのやり取りに反則などは存在しない。しかし、かなり低い可能性だが、殺し合いの義務を放棄し、一定時間たった場合、即帰還願望の放棄、および生存競争の脱落希望と認定し、全員の爆弾を爆発させるので、他者を見つけたら積極的に殺し合うことを提案する。』
『これにて、生存競争及び殺し合いの大体の説明を終了と見なす。なので、この場の各個体を用意した戦闘空間へ転送することを宣言する。なお、戦闘空間にはこの場にいる個体以外にも人間種族の投影を置いている。外見的、活動的には通常の人間と変わりないが、彼らはただ居るだけの存在である。ランダムに選ばれた人間のコピーにすぎない、彼らには君たち全員の姿が見えず、音なども認識できないので了承しておくように。……それでは、転送を開始する。』
像が喋り終わると、その場にいる者の殆どが驚きながら、頭から体の下までレーザーにより分解され、会場に転送された。
あれほどひしめいていた者達が転送され、その空間に残ったのは元は犬だった物の残骸と、巨大な二体の像だけだった。
『これより、実験開始を宣言する。』
今此処に、混沌、カオスすぎるメンツの殺し合いが始まった。
【混沌すぎるバトルロワイアル開幕】
【犬@GANTZ死亡】
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