俺ロワ10(いろんな作品でロワ)「オープニング」






何も無い空虚なる空間。壁は白く塗られ、不気味なほど静か。
これから始まる地獄のゲームのスタート地点にしては些か地味が過ぎるが、それ故に不気味さも感じられる。
そしてこの部屋は静寂に包まれてはいるが、人が居ないわけではない。
人の数はゆうに百を超える。
髪の色、服装、背丈を見ても、多少の偏りがあるとはいえ、多種多様な人種がここには集められている。
やがて、どれほどの時間が経過したであろうかと言う時。
一人の少年が目覚める。

「うっ、うんっ、ここ何処ってええぇっ!何ここ?ドッキリカメラでもあるの?ドッキリ人間大集合みたいなっ?」

その少し間の抜けた声が呼び水となり、一人、また一人と目覚める。

「?何処でしょうここは?」
「何なのよ一体?私こんなの知らないわよ」
「おいおい。また厄介ごとですかあ?」
「はあ、なんで私の部屋がこんなにぃ?ってここ私の部屋じゃないのっ?」
「なんなのよ。わけわかんないんだけど!?」

人々の戸惑いの声はすぐにざわめきとなり、部屋を埋め尽くす。
ただ一つだけ分かること。
それは誰もが決して、現状を正確には理解していないということだけ。
そしてそれは、執事服の男性。綾崎ハヤテも同じだった。

「ここは一体……あっ、お嬢様は!」
「……ここだぞ!ハヤテっ!!」
「お嬢様!ご無事でしたか」

ハヤテは咄嗟に周囲を見渡し、幸い近くに居たナギをすぐに見つける。

「どうなってる?私はこんなの知らないぞ」
「ええ、僕もこんな映画みたいな展開は正直……それに何だか明らかに時代錯誤的な服の人や獣耳の人も居ちゃいますし……
何かコスプレ大会でしょうか?………ってそんな雰囲気じゃありませんし」

二人は周囲を見渡し、思わず目に付いた明らかに異質な服装や雰囲気の人を見つけて呟いた。
だが、それらは決してヲタクな雰囲気は見せておらず、それがまた違和感を募らせている。

「とりあえず他の知ってる人が居ないか探してみます……えっ」

ハヤテはナギが隣にいるのを確認しつつ、更に周囲に気を配ろうとするが、それは遮られた。
突然部屋に入ってきた数人の男によって。

「お目覚めかね諸君。私達はこれから君達にあることをやってもらおうと思う。その為にこれだけの者を集めたのだ。君達に拒否権は
無いと考え、理解してほしい。なに、とてもシンプルで簡単なゲームだ。原始的といってもいいだろう。それは……」

そこで男は間を空け、一度言葉を溜めてから一息に吐き出す。

「殺し合いだ!!」

その言葉は部屋に反響し、響き渡る。
そしてその言葉に、真っ先に異を唱えるは最初に声を挙げた少年である。

「殺し合いってなんなんだよ。雄二やムッツリーニはともかく、僕と姫路さんだけは帰してよ!姫路さんは殺し合いなんて出来るわけ
ないし、僕も人を殺すなんていやだ!」
「おい明久!自分達だけ助かろうとするな!友達を見捨てる気か!!」
「悪いな雄二。僕は友情より愛を取る!!」
「お前なぁ」

明久と雄二はいつも通りのやり取りを続けるが、この場においてそれは的外れな雰囲気が強い。
そしてそれをあざ笑うかのように男は答える。

「残念ながらそれは無理な相談だな。一人として拒否は許されない。また、君と姫路という女のどちらも助かるのも不可能だ。
殺し合いは『最期の一人』になるまで続けてもらう。期限は一週間。もし一週間の後に生存者が二名以上居た場合、君達全員に死が
待っていると思ってくれ。また24時間以上連続で死者数が0だった場合も全滅となる。まあそのような事は無いと思うがな。フフフ」

その男の声に再び周囲がざわめく。
既にただ事ではないと言うのはいやでも伝わってくる。

「………さて。ところで、気付かないかな。ドラえもん」
「えっ!」

突然話を振られ、ドラえもんは戸惑いの声をあげる。

「僕の名前を……お前は……」
「恐竜ハンターだよ。君とその眼鏡の少年によってタイムパトロールの捕獲され、収容されていたね。最も無事脱走し、今後は新たな
ビジネスの構築に成功したけどね。それがこれだ。世界中の平行世界のあらゆる能力に長けるものを集め、殺し合いをさせ、そして
その結果を裏の世界の富豪に賭けて貰うという一大ビジネスをね。今回はその第一弾として君達が集められた。既に百万人を超える
人間がこの結果を賭けている。金額なら百兆を超えるかな。君達には感謝をしている。恐竜ハンター等では決して稼げないビジネスが
君達のおかげで出来るのだから。そして感謝の意を示し、優勝者にはある特典を用意している。願いだ。願いを一つ必ずかなえよう。
君達には願いの成就の為に頑張ってもらいたい」

恐竜ハンターだった男は演説のような口調で話し続ける。

「そんな。脱走だなんて」

ドラえもんは信じられないような表情で愕然とする。
しかしそこで再び、それをとめる男が現れた。

「ふざけんな!!何が殺し合いだ!!!願いの成就?一大ビジネス?そんな勝手な理由で俺たちが殺しあうと思ってんのか!!」

黒髪の少年。上条当麻。
彼は怒り心頭で恐竜ハンターに怒鳴りつける。

「そんなふざけた理由でビジネスをやろうってんなら………その幻想をぶっ殺す!!」

上条は恐竜ハンターに向かい走り出す。
だがそこで恐竜ハンターは上条に向けて、ある物を向ける。

「なっ!?」

思わず足を止めてそれを見る。
それはあるリモコンのようなものだった。

「なるほど。幻想殺しの右手を持つ上条当麻。事前のリサーチどおりの性格と予想通りの動きだ。丁度良い。もし、我々に
反抗した場合どうなるか、見せしめになってもらおう」
「見せしめ?」
「そうだ。では行くぞ!」

恐竜ハンターはボタンを押す。
すると、突然何処かしらからある機会音声のようなものが聞こえてくる。

『警告、警告、禁止エリアに抵触しています。今から六十秒以内に脱出しなければ首輪が爆発します』

『首輪』という単語でようやく上条は首に手を当て、自身に細い輪のような金属製の首輪がされている事に気付いた。
無論、他の参加者も一応に首に手を当て、首輪の存在を自覚する。
しかし、上条の首輪には特に音声が聞こえる様子は無い。

「俺のじゃ……無い?一体誰が?」

上条は先ほどの前振りから自分に来るであろう首輪の音が聞こえない事に疑問が頭に浮かぶ。
そして別の所からは焦りに似た声が聞こえてきた。

「なっ、なんだこれは!!」

突然別の男が自身の首から聞こえる音に反応し、驚きと焦りの声をあげる。

「おいっ!どういうことだ!!」

男は恐竜ハンターに声を荒げて訴える。

「僕は何もやってないぞ。何で僕の首輪が鳴る!?あいつだろ。間違えてるぞ。すぐに僕の首輪を止めろっ!!」

必死になって訴える。
だが、その男に対しての恐竜ハンターの男の言葉は無情だった。

「間違ってなどいない。間桐慎二。君は最初から見せしめに選ばれていたのだからな」
「なっ!ふざけるなよお前。どうしてぼくがっ!反抗したあいつを殺せ!!僕は関係ない!」
「そうは行かない。彼、上条当麻は賭けにおける上位に位置している。従って我々の一存で処刑などは出来ない。
だが、間桐慎二。お前は集められた171名で唯一賭けた人間がゼロの人間だ。従って君はこの場で処刑されても誰一人文句を言う
者はいない。呪うならば自分を呪うんだな」
「なっ!………………僕がゼロ?ありえない!!僕はこんな所で死ぬ人間じゃないんだぞ。ありえないありえないありえない。
おかしいよお前。なあ、おかしいだろ。おかしいよなっ!!!」

慎二は叫ぶ。
自身に告げられた残酷な事実に打ちひしがれながらも、それでも叫び続ける。

『爆破まで10秒。9、8、7、6』

「なっ、くそくそくそくそっ、貴様あああああぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」

『5、4、3、2、1、ピーーーーーーードォン』

そして首輪は小さく爆発し、慎二は首が吹き飛びその場に倒れ落ちる。
その惨劇を前に、他の者はようやく事の重大さを理解し、静まり返る。

「……慎二」

親友だった士郎ですら、その惨劇を前には死んだ友の名を呟くしかなかった。
恐竜ハンターの男はそれを周囲に動きが無いのを確認してから、続きを話す。

「さて、分かって頂いたかな。なお、先ほど首輪が発した禁止エリアというワードだが、君達が殺しあう会場の外を指す。
つまり、会場から外へ逃げれば首輪が爆発し、死ぬ事になる。また、定期的に放送で随時禁止エリアは追加していく。
無論、追加された禁止エリアに立ち入っても同じ事になる。死にたくなければ注意する事だ。では長くなったが、そろそろ
殺し合いを始めようか。君達はこれから空間転移によって会場に運ばれる。全員転移の際に傍らに、地図や食料といった物を
入れたバッグがあるので、それを忘れないよう注意するように。またバッグには武器も入っているので、それを使い思う存分
殺しあってくれ。では、健闘を期待する」

その言葉を最後に170人は全てこの部屋から姿を消す。

「さて、誰が優勝するか。楽しみだな」

恐竜ハンターの男の言葉は静かに部屋に響いた。


【間桐慎二@Fate/stay night 死亡】
【残り170人】




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