アニメキャラでバトルロワイアル企画2に投下されたSS






敵を見つけ、彼は臨戦状態に入る。
「変……身!」
まだ人型をしている影に、何の躊躇もなく彼は『変身』し、そのまま跳びかかった。
今の彼には人であったという証は全体的なシルエットしかない。節くれ立った腕、鋭い刃物のついた爪や体を包む甲殻が
月の光を浴び滑るようにてかる。その姿は昆虫のそれであった。
相手もその様子を一瞥し、変体を開始した。
「シャァァァッ!!」
奇声と共に、体が大きく膨れ上がる。服が破れ、今まで押し隠してきた本性が姿を見せた。
四肢や間接の継ぎ目には黒い剛毛がいやらしく生えそろい、節くれ立った細い肢体は、一見巨大な甲虫にも見える。
しかし、尖った鼻面を持つネズミのような頭部には、これまた黒い毛に覆われた大きな耳が広がり、
翼は両腕からわき腹にかけて展開する皮膜の一種だ。しかも、皮膜で制限される腕の代わりなのか、腹部に
鋭い爪を供えた外骨格で包まれた細い足を数対持っていた。
どう考えても、自然な進化の代物ではないだろう。
ムシコウモリとでも言ったところか……?安直な名前をつけたがる組織を思い出し、彼は、ソレをそんなところと当たりをつけた。
親指についたブレードをまっすぐと、足の隙間を抜け相手の胴体へと突き入れる。
親指の第一間接辺りまで外骨格の僅かな隙間をすべるようにねじ入れる。
しかしその指は外骨格の下にある厚い筋肉に遮られ、内臓に達する前に止まってしまう。
その腕を腹の腕でつかんだ怪人は、太い皮膜のついた腕で彼を殴り飛ばした。
その勢いで指が抜け、口に酸っぱいものがこみ上げた。甲殻が砕けm重ねたガラスが砕けるような不快な音が腹から鳴る。
彼もまた、元は組織でナイフバッタと呼ばれた改造人間。
並みの人間なら即死する一撃を受ければ吹き飛ばされるものの、 この適度では死には至らない。
四肢を使い衝撃を殺し、猫のように4つ足で着地。地面へ叩きつけられるのを跳ねるように緩和する。
しかし、傷まではごまかしようがなく、腹からはあまりにも黒い、赤とはかけ離れた改造人間の血がボタボタと落ちる。
その様子を見て、不快なせせら笑いをあげる怪人。
逆に、怪人が彼へと飛ぶ。一飛びで数mの距離をあっさりと縮め、カギ爪のついた腕が、上段から背中を狩るために振るわれる。
それを、見た彼は回避のための移動を中断。カウンターの要領で手のブレードを下から出す。
相手の腕を交差し、クロスカウンターのように。もっとも、彼の腕には刃がついており、狙うは首だが。

しかし、失敗!
交差するはずだった腕は、怪人の手に食い込み、それの手首までは切り裂いたものの、敵のゴムのような筋肉で拘束される。
それどころか、敵はがっちりと握りこむと、大きく振り回した。
その腕に顎を張られ、彼は転倒する。その隙に怪人はのしかかると、スパイク状の爪の生えた拳で、2発、3発と
ボディに叩き込む。呼吸ができないほどの苦悶が、彼を苛む。
痛みから逃れるため、馬乗りになった敵を無茶苦茶に蹴り上げた。だが、がっちりとその姿勢を維持し、どこうとはしない。
「この……!」
適当に手を伸ばし、そこいらに転がる戦闘員の武器を引っつかむ。
銃であることは分かったが、それ以上は確認する時間も惜しい。そのまま腹に押し当て、ゼロ距離で怪人に立て続けに打ち込んだ。
「ゲ……ゲヒャァァァッ!!」
どうやら、武器がよかったらしい。SPAS12――某SF映画で未来からやってきたマッチョな殺人機械が警察署を襲撃するさい使った奴――
しかも 並みのマグナムの3倍といわれる12番ゲージのスラグ。
さすがに近距離から大量に打ち込まれては、改造人間もただではすまなかったらしい。
肩をグシャグシャに崩され、慌てて跳び退る怪人。
今しかないと、背骨の変わりに収容された、巨大なナイフを取り出した。
ナイフでは特に大型と言われるグルカナイフより、さらに大きい。もう、青龍刀などと呼ばれる部類である。
鈍く光るそれを、大きくかぶりを振って叩き付ける。
しかし、怪人もまだ動く余力が残っていたのか、大きすぎるモーションから繰り出される斬撃を避け、まっすぐ上に羽を広げて空を舞う。
頭をかち割ろうという心積もりだろう。だが、そのモーションは囮でしかない。
半身をひねり、全身のばねを使い体制を崩すことを覚悟で 空へと投げる。
まさか大型の、見る限りそれ限りの武器を投げるとは予想はしなかったのだろう。
ブーメランのように直下から迫る刃を受け、みぞおちから口の辺りまで縦に 切断される。
その状態では飛ぶことを維持できずまた血によって視界をつぶされ、落下していく。
しかし、その様子をゆっくり見る暇はない。まだ血を流す腹に力を込め、怪人に、最後の一撃が加えるべく全力で跳躍する!
「ライダァーッ! キ―――ックッ!!」
ただでさえ抉れた胸に打ち込まれる必殺のキックをうけ、全身から血を流し地面へ勢いよく叩きつけられる。
怪人はまばゆい光を放ち、爆発した。



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