首輪取りゲーム
「ハッロォ〜〜!! エブリバ〜〜〜ディ〜〜!!
ごっ機嫌如何〜〜?!」
僕が目を覚ましたのは何時もの聞きなれた目覚し時計の音ではなく。
聞いたことも無い妙にトーンの高い男(?)の大きな声だった。
寝ぼけ眼で辺りを見回すと、妙にファンシーな空間に人間やそうとも呼べない生物やら。
とにかく色んな人がその場に倒れていて、一部の人は僕のように起き上がってきた。
「私の名はマスクドサタァン。そう、今回諸君らに集まってもらったのは他でも無い……」
仮面をつけた妙な男はそこで一呼吸置いた。
僕も釣られて唾を飲み込んでしまう。
そして男は大きな笑顔をつくり割れんばかりの大声で叫んだ。
思わず耳を塞ぎかけるが、遅かった。クソッ。
「楽しいゲェェーーーームをしてもらう!!」
その発言で、僕の時が止まった。ザ・ワールド。
他の起き上がっている人も僕のように時が止まっていたり、笑い出す人まで出てきた。
なんかのお笑い番組だといいのだが、それにしては人間外の生物がリアルすぎる。
きぐるみのレベルはココまで上がったのか?だとしたら凄い話だ。
そんなことは全く気にせず眼前の仮面の男は一人話しつづける。
「ルールを説明しよう! これから君たちをあるところに転送する!
そこで三日間の間に諸君らの首についている首輪を取り合いしてもらう!
なお首輪はこのザックの中に鍵が入っているのでそれで開けられるぞ!
またこのザックの中には三日間生き残るのに大切な地図や食料、さらに幾つかの便利アイテムまで入っている!
上手に活用して腕輪を取りながら生き残ってくれ!」
その説明を聞いてから自分の首に手を当てる。
犬につけるような金属の首輪があったのだが。不思議と心地よく、暖かかった。
「それと、ゲーム中で心臓をぶち抜かれたり首をちょん切られても死ぬことはないので安心してくれ!
仮に死んでしまったとしても首輪が付いている限りは「参加者」扱いとなるからな!
そしてどんな場合にでも首輪が取れてしまった場合には「脱落者」となりここに戻ってくる!
ここには何でも揃っているからゲーム終了まで自由に遊んでくれたまえ!」
おいおい、そりゃーぶっ殺されて首輪を取られる事もあるッてことですか。
冗談じゃない、でも死なないって言ってるしそこらへんは怖がらなくてもいいのか。
男の説明は止まる事を知らない。
「脱落したものは12時間ごとの放送でその名を告げる!
放送では入ってはいけない「禁止エリア」の告知もするから聞き逃すなよ!
そして同時に海の中に飛び込んだ参加者だとかの回収不能になった首輪を地図上のどこかにバラ撒く!
その場所も公言する、だから絶対に放送は聞き逃すなよ!!」
首輪を一つでも多く集められるかもしれない……って事ですね、はいはい。
理解するスピードと並ぶように男の説明は続く。
「そして……見事三日間生き残った者には集めた首輪の分だけの大きさの「ご褒美」を与えよう!
例えば、今もっている首輪一つだけでもカレー一杯分位にはなるぞ!
参加者全員分集めれば凄い大きさの願いになるだろうな!
あーしかし「願いを増やせ!」という願いだけは聞き入れないぞ!それ以外なら何でもありだ!」
……何でもって、スケールデカくないですか? あ、首輪集めなきゃいけないのか。
男はそこでやっと休憩する、少し息も上がっている。
どうやら辛かったようだ、無理も無い。あれだけのスピードで口を動かしつづければ誰だって疲れる。
一部例外を除くが。
「ああ、そうそう。言い忘れるところだった。その首輪はどんなに頑張っても壊れないし傷一つ付かんぞ!
まさか居ないとは思うが「首輪を壊そう」だとか「首輪を分解しよう」だなんて考えるなよ!
首輪としてカウントされなくなって願いが小さくなってしまうからな!
あと、私からも少しゲームを盛り上げる為に用意している物がある!
それは諸君らの首輪を積極的に狩る参加者が居るということだ!
餌食にならないように気を付けてくれ!……では」
そこで、男は手を天に掲げる。
僕の身体もどんどん薄くなっていく……って、ええ?!消えかけてる?!
「それでは!楽しんでくれたまえ!」
最後に聞こえたのは、その一言だけだった。
「願いを叶える楽しいゲーム」、それが「願いを叶える為に手段を選ばないドロドロゲーム」だったなんて。
どこかへ向かっていくこの時のの僕には知る由もなかった。
【ゲーム開始 残りXXX人】
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