お題・足を滑らせ踵落としを避ける5
ええ、格闘技の、そう、今は亡きアンディ・フグが得意としていた、アレですよ。
足を相手の頭の上まで振り上げて、そのまま勢いよく下ろす。
すると、硬い踵が相手の脳天とコンニチワ、って寸法なワケですね。
マニアックな話を補足するとすれば、最初のモーションが上段蹴りのフェイントになるとか、攻撃が頭上っていう死角から来る分かわし難い、とかってのもあるみたいですけどね。
いやあ、自分も小学生自分に良くマネしましたよ。
でも、根本的に足が高くまで上がらないと成立しませんからね、この技。
自分では踵落としのつもりでしたけど、アレ他の人から見れば地団駄踏んでるだけに見えたでしょうね(笑)。
え? なんでそんなことをいきなり言い出したかって?
いえ、まあ、説明すると長くなるんですけどね。
一番大事なのは、僕がうっかり上を向いちゃった、ってことなんですよ。
正しくは天を仰いだ、って言うべきかな。
要は、もうどうしようも無くなっちゃって、相手の人のことも放ったらかしにして、
ただただ空を見ちゃったんです。
すると、そこに、ね。
飛んできたんですよ。
UFO。
うん、完全未確認。でもうっかり確認できちゃった。
馬鹿。俺の馬鹿。
俺の火事場のクロックアップの馬鹿。
これ、踵ですわ。
それも、俺みたいな頭でっかちのひょろい奴の踵じゃなくて、
少年漫画の世界から飛び出してきたような、職業:格闘家、とかって真面目に書いちゃうような人の、踵。
それが、あろうことか上を見上げた僕の顔面の真ん中に向かって降ってくるんですよ。
無いわ。いやホントマジで無いっス。
勘弁して下さいよマジで。
どないしろって言うんですか? この状況。
あーもうこれ打ち所悪かったら死ねる。
いや、良くても死ねる。無理。当たったら死ぬコレ。
今この瞬間俺とスペランカーに優位差無いよ。
ああ、回る回る。走馬灯が回る。
思い出すのは小学生時代。
「踵落としスゲーwww」とか無邪気にはしゃいじゃって。こんな未来も知らずに。
学校で踵落としの振りとかしまくってたんだよなあ。止せばいいのに。
で、止せば良いのに、プールの授業中にも踵落とし。濡れて滑りやすいプールサイドで。
後は、うん、予想通り。
転んで頭打って3針縫いました。
そうなんだよなあ、その時も今みたいに……
濡れて、滑りやすいのに、足元が御留守になって……
「うわあッ!」
ここでまさかの軌跡。
あの堅そうな踵は、僕の視野からさようなら。
そして、こんにちわ痛みに悶える男の人。
神様マジさんきゅ!
「くそッ、このヤムチャ様ともあろうものが、油断したッ!」
頭悶えながらなんか言っています。
そこで、僕は小学校時代に大好きだったミヨちゃん(仮)が、3針事件勃発直後に囁いた、慈愛に満ちた甘い言葉を彼にもプレゼント。
「ゴキブリに殺虫剤かけたみたい」
グッバイ青春!
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