陰気な二人






にいむらとマナーは食料を求めに市街地へと来ていた。
「おい、マナー。どこに忍び込む?」
「そうだな……とりあえず店を探してみよう。これだけ大きい町なら、
きっと食べ物を扱っている店が一つか二つあるはずだからな」
「オッケー。そんじゃ、探そうぜ」
「おい、ちょっと待て」
すでに歩き始めていたにいむらをマナーは制した。
「ん? どしたよ?」
「馬鹿かお前。敵がいるかもしれないだろうが。探索は念のために探査
機でチェックしてからだ」
「あ、そっか。わりぃ」
懐から取り出した探査機で市街地周辺の安全を確かめるべく、マナーは
番号を目にも止まらぬ速さで打ち込んでいった。そのタイピングを見てに
いむらは思わず溜息を漏らす。
「お前って何でも出来るよな、実際」
言葉だけ聞くと呆れ口調だったが、それに反してにいむらの顔は嬉しそ
うで、誇らしげだった。
「まーね」
聞く人が聞けば怒りそうな返答だが、それでもにいむらは笑っている。
それはネットでは得られない、人と人との生の接触でしか生み出されな
い笑顔だった。

 「ち。二人いるな」
 打ち込みを終えたマナーが呟いた。
 「誰と誰だかわかるか?」
 「一人は暇人氏で……一人はちょっとわからんな」
 「潰すか?」
 殺気に逸るにいむらにとは同調するかのように、マナーは頷いた。
 「ああ、そうしないと安心して行動できないからな」
 「よっし、決まりだな! って、俺の膝パンクしてたぁ……」
 そう、にいむらは先の挽歌・イエロー戦で膝がパンク気味なのだ。通常
歩行にはあまり支障は無いが、シャイニングウィザードを炸裂させると
なると膝が破壊してしまう恐れがあった。人を五人も殺してしまっては、
当たり前の結果かもしれない。しょんぼりとして屈みこむにいむらに上
から声が降ってきた。
 「おいおい。言ったろ? 今度から俺も戦闘に加わるって」
 マナーにやりと笑うと、ガクランの上着を脱いだ。それを見たにいむら
の顔が喜色に染まる。
 「ついにマナー先生の出番か! そうだよな、俺には膝があって、彗夜
には球技があるようにマナーにはそれがあるもんな!」
 「そうだ。だから高校生連合は無敵でいられただろ?」
 「ああ。ああ!」
 にいむらは嬉しくてしょうがないらしい。
 「いこうぜ! 久々のコンビプレイを奴等に見せ付けてやる」
 マナーもちょっと嬉しいらしい。

 二人は揃って歩きだした。思えばこの一日は色々な事があったが、
時間のほうはまだ午後5時になったばかりだった。



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