The ruler rules/杓子定規
1.全てにおいて自己の生存が優先である
2.上記に反しない限り、初対面の相手とは交戦しない
3.上記に反しない限り、殺す
4.ルールは他者に漏らさない
このような狂気の場において、何よりもルールが大切だと、27:荒門は考えた。
どんな場合においても冷静沈着、かつ冷酷に行動する為に。
この島を生きて出る為に。
俺は死ぬわけにはいかない。なら生存は全てに優先するだろう。
生存する為には敵を排除する(しなければならない)のだから、人殺しも是認しよう。
なら、会った人間は皆殺しか? それではつまらない、と荒門は考えた。
第一ルールの数が足りない。最も単純な勝敗ゲーム=じゃんけんでさえ、四つものルールが存在するではないか。
なら、ゲームはゲームらしく、スリリングでエキサイティングで、なおかつ自分にとっても少々不利な条項を定めよう――第二、第三のルールはそうして決められた。
単純ゲームにおける裏切りのセオリー。その情景を思い浮かべて、荒門は唇の端を釣り上げた。嗚呼、意図的不和を前提とした人間関係!
そして四つ目のルール、これは適当に定めた。前述のじゃんけんにおける第四のルール=あいこの存在など、勝敗を決する為のルールではないではないか。だから、ほとんどゲームとは関係ないルールで構わない。相手が知ろうが知るまいが、適用には関係ないのだから。
四つのルール……四戒……悪くない字面だが、荒門はこれを全てとは考えていなかった。
かのエクソダスの後に、シナイ山で授けられた八戒。おいおい、その数にも近づけていくつもりだった。
そうそう、ルールを施行するに当たって、各人に強制力を生むための執行力――この場合武器――が必要なのは、言うまでもない。
荒門はポケットの上からその感触を確かめた。
武器の名前は、レモンスクイーズ……その名の通り、手のひらの中で握る事で弾丸を発射する、暗殺銃だ。
実際、この武器で派手な殺陣を繰り広げるのは不可能と思えたが、それでも荒門には勝機があるはずだ、と考えていた。
一つは言うまでもなくルール。そしてもう一つは……。
「さて、それじゃあ誰かを探してみましょうかねぇ」
荒門はデイバッグを背に担ぐと、枝の隙間から刺す木漏れ日に向けて微笑を送った。
彼の固定ゲシュタルトは、その顔が、これ以上ないほどの『善人の表情』であることを伝える。
接触し、懐柔し、内側から崩壊させる……ジョーカーの裏に他と変わらない模様が印刷されているように、荒門は自らの役割を不運の象徴とすることに決めた。
引いたが最後、永遠に呪われるハズレ札。
「ああ、いい天気……絶好のアレ日和と言ったところですか。各人解釈は違うでしょうけど」
支配者は統治する。己が絶対的為政をもって、望む結末を生み出す為に。
【27:荒門 行動開始 レモンスクイーズ所持】
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