葵の使命






日向葵(34番)は走っていた。
もはや、さっき見た事実―――セルゲイが呼びかけに答えたNBCと#4-6を殺した事を―――多くの人に伝えることが自分の使命になっていた。
どこをどう走ってきたのかは覚えてないが、セルゲイとは逆の方向に走っている事は確かだった。
(セルゲイさんみたいに悪鬼のような人もいるかもしれない、二人以上で仲の良さそうな人なら大丈夫。)
葵は少し落ち着くと、今度はゆっくりと歩き出す。



「―――こん――ってしまっ―――うね・・・」
声だ。
「僕たち――――際に話しを――――――目の前で――――ないはず―――」
それも二人。
(どうやら仲間同士みたいね、だけどもうちょっと様子を見てからじゃないと。)
鎌を握り締め音を出さないように近づく葵。
しばらく無言でいた二人だが、そのうちの一人が口を開く。
「瀬戸さん、私はしぇんむ〜達を倒そうと思います。」
(瀬戸さんって紙媒体化の人よね?)
そんな人まで連れてこられたという事にびっくりしながら、葵は聞き耳を立てる。

「あなたはどうするのですか?」
「僕・・・、僕は・・・、僕も一緒に行きます!」
「僕は、僕の無謀とも思える計画に賛同してくれたみなさんを・・・、殺すなんてできないですから。」
「僕には、彰のような行動力も耕一のような強さもありませんし、武器もこんな杖ですし、役立たずになるかも知れないですけど。」
「構いませんよ、味方がいるだけで心強いです。」
「はい!」
(この人たちは信頼できそうね)
満面の笑みで笑う二人を見て葵はそう思った。

「それよりこれからどうするんですか?」
瀬戸は杖だし、中条は麻酔銃だ。
こんな武器では到底勝てるわけがない。
表情からそれを察知したのか中条は答える。
「はい、さすがに二人で行くのは無謀ですし、協力者を見つけるのが先だと思いますが・・・」
「協力者ですか?」
「やはり、瀬戸さんと共に紙媒体化を進めてきたセルゲイ氏が妥当だと私は思うのですが。」
「僕もそう思います。彼はリーダーとしても優秀だ、彼なら協力してくれますよ!」
それにさっきの放送でも呼びかけてましたしね、と微笑む。
(いけない、彼らも騙されているわ!事実を伝えなきゃ!)
葵はとっさに飛び出した。
「誰です!」



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