無題
名無しさんだよもんは暗い部屋で目覚めた。帰宅して、メールして、それから……。
思い出せない。上体を起こし、辺りを見回す。
「気がついたようだな」
男が部屋の隅から声をかける。見覚えの無い中年。関西風のイントネーション。
「俺は馬場だ。VAの、馬場だ」
VA。ビジュアル・アーツ。葉鍵板住人である名無しさんだよもんは、その人物が
何者であるのか諒解した。
「……これはどういうことですか?」
立ち上がりながら問い掛ける。頭が上手く回らない。
「葉鍵ロワイアルに関わった連中には地獄を見てもらう。その首輪がなんなのか、熱心な
読者のお前には判るだろ?」
「コテロワですか? 私はコテではない。単なる名無しだ」
「紙媒体化、なんてものに関わった時点で貴様は名無しから抹殺対象に格上げされた。
貴様の名を知る参加者は一人もいない。そもそも貴様には名前が無い。『名無しさんだよもん』
などと名乗ったところでピラニアの一匹に思われるだけだ。書き手連中のピラニアへの恨みと
憎しみを一手に引き受けて、殺されろ。それが嫌なら……奴等を殺せ」
馬場は名無しさんだよもんの足元に鞄を投げつける。
「それがいわゆる至急武器ってやつだ。何が入っているかは知らん。せいぜい頑張れや」
そう言うと馬場は名無しさんだよもんに背を向け歩き出す。ドアを開け、出ていこうとする
馬場を名無しさんだよもんは呼び止める。
「その前に、言っておくことがあります」
「なんだ?」
顔だけを向ける馬場。名無しさんだよもんは静かな声で、はっきりと宣言した。
「×至急武器
○支給武器」
馬場は一瞬だけ意表を突かれた表情を浮かべ、そして大笑した。その笑いが収まった時には、すでに名無しさんだよもんの姿はなかった。
【名無しさんだよもん@誤植指摘 参戦】
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