例によってコイントス






「全く……とんだ災難よねぇ」
 七連装ビッグマグナム(26番)は、バッグを片手に森の中を走りながらひとりごちる。
 木々の間を駆け抜け、ちょっとした岩場に出たところで足を止めた。
「ここなら見通しもいいし……さぁて、どうしよっか……」
 とりあえず今後の方針を練る。といっても選択肢はたった2つ、ゲームに乗るか、運営を潰すか、だ。
「まっ、ベタベタだけど……やっぱりこれかしら」
 ポケットの財布からコインを取り出して、はっきり宣言する。自分の意志を確かにするために。
「表なら運営と戦う、裏ならゲームに乗る、ということで」
 キィーーーーン……
 静かな金属音を立ててコインは弾かれ……

 そして、それは落ちてこなかった。強く弾きすぎて、小枝に引っかかったようだ。
「えっと……これって、臨機応変にやれ、ってことかしら……」
 呟いて上を見上げていたが、どうも落ちてきそうになかった。
 とりあえず、バッグの中身を確認する。食料と水、地図の他に、そこには確かに「武器」が入っていた。
「ネタアイテムだと思ってたのに……実在するのねぇ」
 一緒についていた取説も確認する。使い方まで全く同じだ。確かに、例の「武器」に違いない。
 しかし、これは使えない。仮にも自分は女、乙女なのだ。こればっかりは使えない。どうしても使うわけにはいかない。
 そう、この「武器」……中華キャノンだけは。

 とりあえず中華キャノンを、バッグの奥深くに追いやる。
 幸い、自分で持っていたポーチの中には化粧品一式などが入っている。これだって、使いようでは武器になるだろう。
「さあて、どうしよっかなぁ」
 呟きつつ、その場から移動する。なるべく人と出会わない方向を目指して。


 結論を先送りにした彼女が去ったその場所に。
 風が吹き、木の枝が揺れ、コインが落ちてくる。
 そのコインははっきりと、裏を向いていた。

 マグナムはそれに気付いていない。

【26番:七連装ビッグマグナム 支給武器:中華キャノン】



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