やすらぎのひととき
百貨店に入っていく二つの影………を見守る、二つの影があった。
「…さて、正午を過ぎたわけだけど…正直あの中、かなりまずいことになってそうだねぇ」
「さっきの3階でピカピカ光ってたのが気になる。あれは少なくとも自然に起こるものじゃない」
「やっぱり今入っていった二人のほかにも人が居る、と」
「それも、最低二人。……あぁ、もしかしたら片方はさっきの放送の中に入ってるかもしれんけど」
百貨店の入り口の様子を確認でき、尚且つ自分たちの身を隠せる絶好の場所…
#3-174のスタート地点の喫茶店に、T.T(No.28)と#3-174(No.38)は居た。
本日の昼飯:玉子焼き
目玉焼き
スクランブルエッグ
喫茶店には食材は無かったものの、粋な計らいと言うべきか、
塩コショウやフライパンといった調味料や調理器具は用意されていたため
(流石に包丁など、危険な武器になりそうなものは無かったが)、
二人はパンのみの他の参加者よりは幾分豪勢な食事にありつくことが出来た。
…勿論、他の参加者に気付かれぬよう、こっそりと調理したのだが。
「…とはいえ、卵オンリーじゃなぁ…」
T.Tがぼやく。元々は長期戦を見越し、百貨店で食料を補給しようとここまで来たのだが、
百貨店の中は思いもよらぬドロドロの紛争の真っ最中のようで入るに入れず、
ここで様子見と言う名の立ち往生を食っているわけだ。
「こっちから攻め込めるような支給品じゃないからね」
律儀にも食器を洗いつつ、#3-174は返答する。
「状況次第ではここを諦めて、早々に移動したほうがいいかもしれんね」
「んまあ、うちらはいざとなったら卵がたっぷり三日分は」
「いや、それは勘弁」
「…とはいえ、これ以上ここに留まってもロクなことが無さそうだ」
二人の大筋の意見は固まった。
「撤退だな」
「ですね」
二人の意見が固まり、席を立とうとしたまさにその時。
店の入り口のガラスがばりん、と音を立てて一斉に砕け散り、無数の弾丸が飛び込んで来て、
まさに超人的な反射神経でT.Tがカウンターの裏側に身を隠し、
逆にカウンターから出てこようとした#3-174も慌ててカウンターに逆戻り、身を伏せた。
「…こ、怖ぁ〜……」
「…さ、流石ライダー」
こういう時に冗談はいらん、とT.Tは言いたかったが、正直そんな余裕も無かった。
「多分向こうはショットガンだろうね。しっかし店の真ん前でぶっ放しやがって。
百貨店の奴らが気付いて出てくるぞ…」
「よし、裏口から逃げるとするか」
「まあ、それしかないね」
足音を立てないように、二人はこっそりと裏口から脱出していった。
…ちゃっかりフライパンを持ち出して。
「おらぁーっ、出てこんかい!出てこんならこっちからいくでぇーっ!」
その事に、訳あり名無しさんだよもん(No.25)はもう暫く気付きそうに無い。
【#3-174 フライパンをゲット】
前話
目次
次話