おかえり、バイバイ






ばんばんばんっ!!何度も銃声が響いた。
美坂栞は突然の襲撃に対応できず、腕と腹に銃弾を受けてしまった。
(く……隠れて攻撃してくる人なんて、嫌いです…)
先ほど自分が水瀬名雪を襲った状況は忘れているらしい。
ボウガンで銃相手に面と向かっていくのは不利と考え、なんとかその場を逃れたのだった。

一方銃を撃った当人、藍原瑞穂は今も尚身を潜めていた。
(私…ワタシ…勝った…強い……負けない……死なない……シナナイ…!!)
瑞穂はこのまま、ここで身を潜めていることに決めた。
動かないことが生き延びるための秘訣なのを知っているのか否か、とにもかくにも彼女は最善の選択を選んだかに見えた。
が、彼女には休む間を与えるべきでないとでもいうのか。何者かの足音が近づいてきた。
(落ち着イテ、銃を両手デ持ち、足音のスル方向へ、ゆックリ、ユックリ、引き金ヲ…。)
しかし銃弾は出ることはなかった。さっき襲ったときに弾切れになったようだ。
「い、いヤ…ソんナ……」 つい声を洩らしてしまったが、今の彼女に気に留めるだけの余裕はないだろう。
そこで足音の主からも声がした。 「瑞穂? 瑞穂なの? 私よ」
(コノ声はカナコチャン……? どうして、サッキ私を。でも戻っテキテクレタンダネ!!)
瑞穂は考えも定まらぬまま、太田香奈子に向かってよたよたと走り寄っていった。
「カナコちゃん! 私凄く、スゴク怖かったヨォ…」
「ごめんね。さっきの私、ちょっと動転しちゃってて。瑞穂と離れ離れなんて…」
涙声のまま瑞穂は香奈子へ抱き寄った。香奈子も笑顔でそれを受け止める。
「香奈子ちゃん…ずっと、私たち一緒だy」 ふいに、瑞穂が崩れ落ちた。
「え、あ、何…で……」 その疑問に対する答えもないまま、瑞穂は息を引き取った。
「は〜、電波入っちゃってる子って怖いわねぇ。銃向けといて泣きながら抱きついてくるって。あっははは」
香奈子はそのまま瑞穂の支給品を持って歩いていった。
「ふふ、これで私が最後まで生き残れるわ。月島先輩…待っていてくださいね」

【美坂栞 重症】
【太田香奈子 ベレッタ、スペツナズナイフ所持】
【藍原瑞穂 死亡】
【残り45人】




前話   目次   次話