ボーイッシュな二人
簡素な船着場で半時ほど立ち尽くしていた泉野明がまず最初にしたこと、
それは右の頬を抓ることだった。
―痛い―
「夢じゃない」
とたんに背筋が冷たくなる。あの不気味な美女も話も、体が真っ二つになった女の子の死も
その少女の遺体から出てきたあの生理的嫌悪をかき立てる目玉お化けも、全ては現実なのだ。
―怖い、怖い、怖い―
現実を認識すると同時に恐怖が意識を侵食する。顔が青ざめ、体は震える。
「隊長・・・太田さん・・・遊馬ぁ・・・」
泉野明は逃げたかった、未知の状況から。現実から目を背け膝を抱え蹲りたかった。
「あたしは・・・」
体は震え、顔は青ざめ、それでも野明は歯を食いしばる。
「あたしは・・・警察官だ。」
背筋を伸ばし、胸を張り、真っ直ぐに前を見すえる。
「あたしは・・・大人なんだ!!大人なんだから・・・立派大人なんだから、負けないんだー!!!」
泉野明は社会人である。社会人は責務を果たし、己の足で立って歩かねばならない。
泉野明は覚悟を決めた。
立派な大人であるために、誇れる自分であるために警察官としての責務を果たす覚悟をである。
泉野明は吼える!!
「よし、覚悟完了!!当方に迎撃の用意あり! 来るならこい!!」
「立派な覚悟だと思うが、もうちょっと音量を下げたほうがいいと思うぜ、お姉さん」
「まったくだ、レディーたるもの常に淑やかであらねばな。」
「うひゃあ!!」
突如、背後から声をかけられ飛び上がる野明。
「だだだ誰!?」
「落ち着きなお姉さん、別にとって食ったりしねーよ。」
振り返った先・彼女の背後にいたのは、
「まず自己紹介しとこうか、俺の名前は早乙女乱馬、見ての通り高校生だ。
ま、多少腕に覚えはあるけどな。」
図鑑のような大きな本を小脇に抱え、何故か詰襟の学生服を着たお下げの愛らしい少女と
「そして私が華麗なるビクトリーム様だ!言ってごらん?」
アルファベットのVを重ねたような珍妙な“何か”であった。
【B/2 マウンテントゥクリッター 船着場/早朝・ゲーム開始から30分経過】
【泉野明@機動警察パトレイバー】
[状態]恐慌状態から立ち直った
[装備]不明
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.警察官として恥じない行動をする
2.話しかけてきた少女と会話
【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]健康・女
[装備]魔物の本(ビクトリーム様)
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1.とりあえず野明と話してみる
2.あかねを探す
3.主催者をぶん殴る
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